Fireplace Chair | ファイヤープレイスチェア


About

Designer: Tove & Edvard Kindt-Larsen(トーヴェ&エドヴァルド・キント=ラーセン)
Manufacturer: Gustav Bertelsen(グスタフ・ベルテルセン)
Year: 1940
Material: Oak, Mahogany, Teak, Wool, Leather
Size: W 68 × D 72 × H 72(SH 36)


Story

1940年に発表された「Fireplace Chair(ファイヤープレイスチェア)」は、トーヴェ&エドヴァルド・キント=ラーセン夫妻による代表作のひとつです。1939年にデザインされ、翌年のコペンハーゲン・キャビネットメーカーズ・ギルド展で一等賞を獲得しました。この受賞によって夫妻の名声は確立され、デンマーク・モダンデザイン史における重要な転換点を示す作品となりました。

夫妻は師であるコーア・クリントの分析的アプローチを基盤にしつつ、幾何学的な造形をより柔らかく、人間的な感覚を伴うフォルムへと発展させました。本作では、構造体としてのフレームと快適性を担う布張り部分を分離するという独創的な手法を導入し、軽快さと機能性が両立されています。

製作を担ったのは名工グスタフ・ベルテルセンで、夫妻とは長年にわたり協働関係を築きました。彼の卓越した技術は、アームレストの彫刻的な造形や座面下のX字型クロスバーといった特徴を支え、家具としての耐久性と美的完成度を保証しています。

素材にはオーク、マホガニー、チークといった良質な木材が用いられ、張り地には耐久性に優れたウールが採用されました。座面を支えるレザーストラップは構造を隠さずに見せる要素として取り入れられ、機能主義の理念を明確に体現しています。これにより、素材の誠実さと機能性が美的要素へと昇華されました。

その名が示す通り「Fireplace Chair(ファイヤープレイスチェア)」は暖炉の前での使用を意図して設計され、低めの座面によって温もりを感じながらくつろぐことを可能にしています。今日では単なる家具にとどまらず、夫妻の革新性と職人技の結晶として評価され、後にフィン・ユールの「45チェア」にも影響を与えた先駆的作品と見なされています。

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