JH703 Easy Chair | イージーチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1960
Material: Oak, Steel, Leather
Size: W74–75 × D64–67 × H72–73 × SH40 cm


Story

JH703イージーチェアは、ハンス・J・ウェグナーのキャリアにおける素材探究の重要な転換点を示す作品です。オーク材のアーム、スチールフレーム、そしてレザー張りの座面と背もたれを組み合わせた構成は、従来の木材と籐(ラタン)を主体とした作品群とは異なり、工業化が進んだ1960年代という時代精神に呼応するものでした。

正面から見ると堅牢で安定感のある佇まいを持ちますが、側面からは細いスチールフレームが軽快さを生み出し、空間に圧迫感を与えません。この「二重の性格」は、ラウンジチェアとしての快適性と現代的なインテリアに馴染む軽快さを同時に実現しています。

また、この椅子の最大の特徴は異素材の接合部にあります。精密に加工されたスチールが木製アームに組み込まれる部分は、工業技術と職人技が交差する象徴的な箇所です。この接合によって強度と美しさが両立され、ヨハネス・ハンセン工房の高度な技術力が最大限に発揮されました。

製造はヨハネス・ハンセン工房によって行われ、1960年前後という彼らの黄金期に生み出されました。ウェグナーと工房の協働は、デンマークモダン家具の歴史における中核的な存在であり、JH703もまたその結晶のひとつです。

このモデルは後年、PPモブラーに引き継がれた代表作群には含まれておらず、現在ではヨハネス・ハンセン工房のオリジナル作品としてのみ存在しています。そのため、JH703は単なる家具ではなく、特定の時代と協働関係を物語る歴史的なアーティファクトとして位置づけられます。

 

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