AP43 Airport Chair | エアポートチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: AP-Stolen(A.P.ストーレン)
Year: 1958
Material: Stainless steel, Oak, Fabric or Leather
Size: W 620–660 × D 660 × H 710 × SH 330–400 mm


Story

AP43は、ハンス・J・ウェグナーが1950年代後半に設計した「エアポート・シリーズ」の一角をなすラウンジチェアです。コペンハーゲン・カストラップ空港の拡張計画に伴い、公共空間に適した耐久性と機能性を備えた椅子として誕生しました。

それまで木材を主構造とする作品を多く手がけてきたウェグナーにとって、本作はステンレススチールを主要構造に採用した点で特筆すべき存在です。空港という高頻度利用の環境に対応するため、強度とメンテナンス性を重視しながらも、人の身体に寄り添うフォルムを失っていません。

AP43の最大の特徴は、アームを持たないアームレス構造にあります。視覚的な軽やかさを生み出すだけでなく、複数脚を密接に配置できるため、公共空間における柔軟なレイアウトを可能にしました。斜め方向からの着座も自然であり、動線の流動性を妨げない設計です。

構造は、外側のスチールフレームと内部のオーク無垢材フレームによって支えられています。座面下にはゴム製ストラップが張られ、衝撃を吸収しながら適度な反発力を生み出します。クッション構造は簡潔ですが、座面は緩やかに後傾し、背もたれと連動して身体を安定的に支えます。座面は適切な通気性と保持力を両立しています。

製造を担ったAP-Stolenは、張り家具において高い技術力を誇った工房です。見えない内部構造にまで精度を求める姿勢は、ウェグナーの「構造の誠実さ」という思想と強く共鳴していました。AP43は、個人のための工芸的椅子という枠を超え、公共空間における機能美の統合を示した重要作といえます。

現在、AP43は現行生産されていないモデルです。しかしその設計思想は、スチールと自然素材を調和させる北欧モダニズムの一つの到達点として、今日の空間設計にも示唆を与え続けています。多様な空間での活用が期待されます。

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