About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: FDB Møbler(FDBモブラー)
Year: 1947
Material: Beech, Paper cord
Size: H82 × SH40 cm
Story
1947年、ハンス・J・ウェグナーはFDBモブラーのためにアームチェアを設計し、マガザン・デュ・ノールを通じて世に紹介しました。戦後の混乱がまだ色濃く残る時代にあって、生活に根ざした家具のあり方を問い直す試みとして生まれた一脚です。
フレームに選ばれたのはブナ材でした。デンマーク国内で安定して入手でき、強度と加工性を兼ね備えたこの素材は、当時の量産体制にとって現実的な選択でした。ウェグナーはその特性を活かし、背のスピンドルとアームの曲線を穏やかにつなぎ、全体に無理のない輪郭を与えています。装飾を施すのではなく、部材同士の関係そのものを形として見せる構成が取られています。
座面にはペーパーコードが用いられています。物資が限られていた時代背景の中で選ばれた素材ですが、編み込みによって適度な弾力と通気性が生まれ、日常使いに耐える実用性を備えています。手作業による工程を残すことで、量産品でありながら、どこか人の手の気配が感じられる仕上がりとなっています。
寸法やプロポーションは、家庭の中で自然に使われることを意識して整えられています。背と肘の角度、座面の高さはいずれも控えめで、身体の動きを妨げません。構造は簡潔ですが、水平材と垂直材の配置には明確な秩序があり、全体として落ち着いた佇まいを保っています。
百貨店を通じて紹介されたこの椅子は、特別な空間のための家具ではなく、日常の延長にある存在として位置づけられていました。誠実な素材と抑制された構造によって、生活の中に静かに溶け込むことを目指した設計です。1947年という時点で示されたこの姿勢は、後年の代表作へとつながる思考の基礎となり、デンマーク・モダンの本質を今に伝えています。