Story
ナナ・ディッツェルは、デンマーク・モダニズムを代表する女性デザイナーとして、家具、テキスタイル、ジュエリーの各分野で多彩な活動を展開しました。彼女のデザインは、遊び心にあふれながらも機能性を兼ね備えており、男性優位だったデザイン界において新しい道を切り開いた存在です。
1923年にコペンハーゲンで生まれた彼女は、家具職人としての修行とコーア・クリントに学んだ機能主義的基礎を経て、1940年代にヨルゲン・ディッツェルと共にデザインスタジオを設立しました。夫妻は数々のデザインコンペティションで受賞し、国際的な評価を得ることになります。
1950年代には籐やファイバーグラスといった非伝統的な素材を積極的に取り入れ、1959年の《ハンギングエッグチェア》で世界的な注目を集めました。また、1954年にデザインした《ND54 ハイチェア》は、デンマークの文化遺産に選定されるなど、生活に根ざした革新的な子供用家具として高く評価されています。
1960年代以降、ヨルゲンの早すぎる死を経ても活動を止めることなく、ロンドンでの活動を通じて国際的な視野を獲得しました。この時期には新素材を活用した実験的な作品やテキスタイルデザインを発表し、英国デザイン界にも大きな足跡を残しました。
晩年にコペンハーゲンへ帰還した彼女は、1993年に《トリニダードチェア》を発表し、デンマークデザインを再び国際的に輝かせました。彼女の哲学は「人生はできる限り楽しいものであるべき」という信念に貫かれており、その精神は現在も多くのデザインに息づいています。
About
Year: 1923-2005
Place: Copenhagen（コペンハーゲン）
Manufacturer: Fredericia（フレデリシア）、Carl Hansen & Søn（カール・ハンセン＆サン）、Sika Design（シカ・デザイン）、Kvadrat（クヴァドラ）、Georg Jensen（ゲオルグ・イェンセン）
History
1923: コペンハーゲンに生まれる
1943: デンマーク美術工芸学校に入学し、コーア・クリントに学ぶ
1946: ヨルゲン・ディッツェルと結婚し、デザインスタジオを設立
1951: 《ラナ ラウンジチェア》を発表
1954: 《ND54 ハイチェア》をデザインし高い評価を得る
1956: ルニング賞を受賞
1959: 《ハンギングエッグチェア》を発表
1961: ヨルゲン・ディッツェル死去後、スタジオを継続
1962: 《トードスツール》を発表
1965: Kvadrat社の《ハリンダル65》をデザイン
1968: カート・ハイデと再婚し、ロンドンに移住
1970: ロンドンでデザインセンター「インタースペース」を設立
1981: ロンドン・デザイン産業協会の会長に就任
1986: コペンハーゲンに帰国し、スタジオを再設立
1989: 《ベンチ・フォー・トゥー》を発表
1990: 国際家具デザインコンペティション旭川で金賞を受賞
1992: 《ファンチェア》を発表
1993: 《トリニダードチェア》を発表し世界的成功を収める
1995: ID賞を受賞
1996: 英国王立芸術協会より名誉ロイヤルデザイナーの称号を授与される
2000: 世界的な展覧会で多数の回顧展が開催される
2005: コペンハーゲンにて死去（81歳）
Furniture
・Rana Lounge Chair | ラナ ラウンジチェア
・Madame Lounge Chair | マダム ラウンジチェア
・Hanging Egg Chair | ハンギングエッグチェア
・ND54 High Chair | ND54 ハイチェア
・Trinidad Chair | トリニダードチェア
・Toadstool | トードスツール
・Lulu Cradle | ルル・クレイドル
・Basket Chair | バスケットチェア
・Ditzel Lounge Chair | ディッツェル ラウンジチェア
・Butterfly Chair | バタフライチェア
・Bench for Two | ベンチ・フォー・トゥー
・Fan Chair | ファンチェア
・Shell Chair | シェルチェア
・Model 83 Easy Chair | イージーチェア
・Nanna Chair | ナナ チェア
・Children’s Furniture Series | 子供用家具シリーズ
・Hallindal 65 | ハリンダル65（テキスタイル）
・Sis | シス（テキスタイル）
・Wave Ring No.91 | ウェーブリング No.91（ジュエリー）
・Necklaces and Bangles | ネックレス・バングル（ジュエリー）