About
Designer: Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1959
Material: Polyurethane foam, steel, upholstery
Size: W75 × D60 × H70 × SH40 cm
Story
Pot Chair Model 3318は、アルネ・ヤコブセンが1959年にデザインし、翌1960年に完成したSASロイヤルホテル(現ラディソン・コレクション・ロイヤルホテル)のために制作されたラウンジチェアです。オリジナル名「Gryden™」(ポットの意)は、座る人をやさしく包み込む形状を象徴しており、軽快な抱擁感を持つラウンジチェアとして設計されました。
この作品は、アントチェアやセブンチェアに代表される薄板成形技術から、エッグチェアやスワンチェアに見られる硬質フォーム成形技術へと移行する時期に誕生したものであり、技術的な変革期を象徴しています。シートシェルと支持フレームを明確に分節した構造は、建築的思考を持つヤコブセンが「形態の合理化」を家具に適用した好例です。
SASロイヤルホテルにおいて、エッグチェアやスワンチェアが強い視覚的アクセントやプライバシーを担ったのに対し、ポットチェアは社交空間や待合スペースに配置され、軽快で開放的な雰囲気を提供しました。背もたれが低く抑えられているため、空間の中で人々が自然に交流できる場を演出する意図が込められています。
製造はフリッツ・ハンセンによって行われ、硬質フォームの成形後にパディングを施し、多様な張地で仕上げられました。縁取りのパイピングがシルエットを際立たせ、シンプルながら洗練された存在感を生み出しています。1959年の発表後は短期間で生産終了となりましたが、2018年に復刻され、現代のインテリアに適した快適性と耐久性を備えたモデルとして再評価されています。
この復刻により、ポットチェアはオリジナルの象徴的なフォルムを維持しながら、現代の素材技術に基づく耐久性と快適性を獲得しました。今日では、プライベートな住宅空間からコントラクト市場まで幅広く活用され、時代を超えて機能するタイムレスなデザインとしての地位を確立しています。