VLA61 Monarch Chair | モナークチェア


About

Designer: Vilhelm Lauritzen(ヴィルヘルム・ラウリッツェン)
Manufacturer: Normina Cabinetmakers / Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1944
Material: Cuban Mahogany, Brass, Upholstery
Size: W69 × D73 × H80 cm(SH42 cm)


Story

モナーク・チェアは、デンマーク建築界の巨匠ヴィルヘルム・ラウリッツェンが1944年にデザインした希少なアームチェアです。その名は、彼が生涯をかけて研究・収集した蝶「モナーク(オオカバマダラ)」に由来しており、有機的な曲線美を持つフォルムに自然への敬意が込められています。

当初この椅子は、デンマークに建設が計画された「硫酸・過リン酸塩工場」のインテリアのためにデザインされました。工場計画自体は未完に終わったものの、プロジェクトの一環として試作されたわずか10脚が存在したと伝わります。製作を担ったのは小規模なキャビネットメーカー「Normina Cabinetmakers」という名が記録されています。

ラウリッツェンのデザイン哲学は「建築も家具もすべての人に開かれた応用芸術であるべき」という理念に基づいていました。モナーク・チェアもその思想を反映しており、機能主義の合理性と有機的な造形美が見事に融合しています。特にアームレストの二重に湾曲したラインや、涙滴型のフレームは、彫刻作品のような存在感を持ちながらも人間工学的に優れた座り心地を実現しています。

素材には深みのある色合いを持つキューバ産マホガニーと真鍮が用いられています。これらはラウリッツェンが手がけたラジオハウスやコペンハーゲン空港などの建築作品にも多用されており、建築と家具に共通する一貫した美学を象徴しています。張り地にはストライプのウールやレザーが採用され、製造時期や個体ごとに異なる仕様が存在する点も特徴です。

2023年にはカール・ハンセン&サンがラウリッツェン建築事務所と協働し、モナーク・チェアを復刻しました。オリジナルの実物を発見できなかったため、残されたスケッチや写真を基に丹念に再現されたこの復刻版は、持続可能なオークやマホガニーを使用しながらも当時のフォルムや質感を忠実に再現しています。この復刻により、ラウリッツェンの思想と美学が現代に甦り、多くの人々がその魅力に触れる機会を得ることとなりました。

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