FD136 Lounge Chair | フランスチェア


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(フランス&ダヴァーコセン) / France & Son(フランス&サン) / House of Finn Juhl(ハウス・オブ・フィンユール)
Year: 1956
Material: Teak, Upholstery
Size: W78 × D74 × H77 / SH37 cm


Story

FD136ラウンジチェア、通称「フランスチェア」は、1956年に発表されたフィン・ユールの代表的作品のひとつです。この椅子は、それまで木工職人との一点物的な協働で製作されていたユールの家具から一歩進み、工業生産を前提とした新しい時代の幕開けを象徴しました。製造を担ったのは、デンマークのFrance & Daverkosen(のちのFrance & Søn)であり、彼らの技術革新と輸出戦略が、この椅子を国際的成功へと導きました。

デザインの特徴は、フレームから浮かび上がるように独立した座面と背もたれにあります。これにより、椅子全体に軽快さと彫刻的な表情が生まれ、単なる機能的な座具を超えた芸術的存在となりました。また、象徴的なアームレストのディテールは「ペーパーナイフ」と呼ばれ、ユールの数々の名作に共通するデザイン言語を体現しています。

FD136が革新的であったのは、美学だけではありません。ノックダウン方式による生産と輸送により、海外市場への展開が飛躍的に効率化されました。この方法は輸出コストを抑え、デンマーク家具が世界市場で存在感を増す契機となりました。結果としてFrance & Søn社は、1960年代にデンマーク家具輸出の過半数を担う存在へと成長します。

現在、FD136はヴィンテージ市場で高い人気を誇ると同時に、House of Finn Juhl(Onecollection)によってリプロダクションが行われています。現代の技術と持続可能性への配慮を加えつつ、デンマーク国内生産を基本とし、日本の職人との協働によるフレーム製作も行われています。こうした国際的なものづくりのネットワークは、フィン・ユールの哲学を現代に伝え、未来へと継承する試みとなっています。

FD136は、芸術と工業、伝統と革新を結びつけた象徴的な存在です。今日に至るまで多くの愛好家やコレクターから尊敬を集めており、その存在はデンマーク・モダンの黄金時代を体現し続けています。

 

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