About
Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: France & Daverkosen(フランス&ダヴァーコセン) / France & Son(フランス&サン)
Year: 1950s
Material: Teak, Fabric or Leather, Brass
Size: W81 × D74 × H82 cm(SH40 cm)
Story
FD141イージーチェアは、フィン・ユールがフランス&サンのためにデザインしたラウンジチェアのひとつであり、彼のキャリアにおける大きな転換期を象徴する作品です。ニールス・ヴォッダーとの協働による一点物の芸術的家具から、産業的な量産へと移行する中で生まれたこの椅子は、彼の彫刻的感性と量産体制の融合を示しています。
特筆すべきは、フレームと座面を視覚的に分離させる「フローティング」の概念です。浮遊するかのように見える座面は、彼の代表作No.45チェアと同じ思想に基づき、構造と美学が調和した革新的な試みでした。チーク材のフレームは複雑な曲線を描き、接合部は滑らかに仕上げられており、工業的な製造でありながら高い職人技術を感じさせます。
また、この椅子はデンマーク国内よりも早く海外市場で高い評価を受けました。当時、フランス&サンはデンマーク家具輸出の大部分を担っており、FD141もその一翼を担ったのです。彫刻的でありながら実用的な座り心地は、北欧デザインが国際的に認知されるきっかけのひとつとなりました。
今日ではFD141は復刻生産されておらず、現存するのはヴィンテージ市場に流通する数少ない個体のみです。その希少性と美学的完成度から「座る彫刻」と呼ばれ、コレクターや研究者の間で特別な位置を占め続けています。