コペンハーゲン発、世界デザイン業界を動かす潮流とは
2025年6月18日から20日にかけてコペンハーゲンで開催された「3daysofdesign 2025」は、単なるデザイン見本市ではなく、世界のデザインカレンダーにおける重要な指標としての地位を確立しました。今年のテーマ「KEEP IT REAL」は、AIやデジタル技術が急速に進展する現代において、人間にしか生み出せない感情・記憶・物語といった価値を強調し、業界全体に深い共感を呼び起こしました。
フェスティバルには127カ国から460以上のブランドが参加し、コペンハーゲン市内に469以上の展示が展開されました。その中心には「素材の誠実さ」「サステナブルなイノベーション」「物語を語る展示」といった潮流があり、参加ブランドはそれぞれ独自の解釈で真正性を表現しました。
特に注目を集めたのは、持続可能な素材を革新的に活用した作品群です。Fredericia(フレデリシア)の「Pato Paper Chair」は紙素材を用いた画期的なデザインとして高く評価され、+Halleの「Shrinx Lounge Chair」は従来の発泡素材を完全に排した挑戦的な試みとして話題を呼びました。また復刻作品の潮流も強く、Carl Hansen & Søn(カールハンセン&サン)による「CH621 スウィベルチェア」やHAYの「Amanta Sofa」が現代的なアップデートを伴って再登場しました。
色彩の傾向としては、鮮やかなベリー系のパレットと落ち着いたアーストーンの二極化が見られ、空間表現の幅広さが強調されました。さらに、製品を単に並べるのではなく、ホテルや住空間を再現した没入型展示が増加し、観客に「体験としてのデザイン」を提示する姿勢が目立ちました。
この結果、「3daysofdesign 2025」は真正性と物語性を重視するデザインの新しい方向性を明確にし、世界的に影響力を持つイベントへと成長しました。次回は2026年6月10日から12日に開催される予定であり、さらなる発展が期待されます。
「3daysofdesign」とは
「3daysofdesign」は、デンマークの首都コペンハーゲンで毎年開催される国際的なデザインイベントです。市内全域を舞台とし、家具、照明、インテリアから建築、素材開発に至るまで、幅広い分野の展示が行われます。その特徴は、従来の見本市と異なり「都市全体がショールーム」となる点にあります。各ブランドのショールームやギャラリー、歴史的建築が会場となり、来場者は街歩きのように展示を体験することができます。
本イベントは、世界の有力ブランドのみならず新進気鋭のデザイナーも数多く参加し、次世代の才能を発掘する場としても注目されています。2025年は「KEEP IT REAL」をテーマに掲げ、人間らしいデザインの価値を再確認する契機となりました。