デンマークデザイン史における家具と照明、二つの巨匠の哲学が交差する
2025年、フィン・ユールが1963年に構想した照明《FJ Elements》が、ルイスポールセンによって復刻された。この発表は、単なる新製品の投入にとどまらず、デンマークモダンデザインにおける二つの遺産の合流点を示す文化的出来事として注目を集めている。
「家具の彫刻家」と呼ばれるフィン・ユール(1912–1989)が生み出した有機的で彫刻的なアプローチと、1874年創業以来「形態は光に従う」を理念としてきたルイスポールセンの合理主義的哲学。この両者が、60年以上の時を経てひとつのプロダクトに結実したのである。

FJ Elementsの特徴は、二重構造のシェードと、その上部シェードを回転させることで光の方向や外観を自在に変化させられるインタラクティブな機能にある。ルイスポールセンが培ってきた「グレアフリーで快適な光」という科学的基準を満たしつつ、ユール特有の「視覚的な軽さ」と遊び心を融合させたデザインだ。
復刻プロセスは、ハウス・オブ・フィンユールとの共同研究によって進められ、当時のスケッチや資料を基に忠実な再現が図られた。ペンダントとテーブルランプの2種が展開され、カラーはブラック、ホワイト、オリジナルグレーの3種類。いずれもシンプルな幾何学性を基調とし、現代の空間に柔軟に溶け込む存在感を放つ。

この発表は、ポール・ヘニングセンやアルネ・ヤコブセンら照明の専門家との協業を積み重ねてきたルイスポールセンの伝統に、家具デザインを主戦場としたユールを新たに加える「死後のコラボレーション」となった。結果として、機能主義と芸術的アプローチの隔たりを超え、同じ地平にある「人間的で美しく、機能的な環境」を追求する共通の理念が浮かび上がっている。




FJ Elementsとは
フィン・ユールが1963年に構想した照明デザインを基に、ルイスポールセンが2025年に復刻したシリーズ。回転式シェードによる光の調整機能と、シンプルで彫刻的なフォルムが特徴で、ペンダントとテーブルランプの2モデルが展開されている。