2025年、コペンハーゲンで開催された「3daysofdesign」において、家具工房PP Møblerはハンス・J・ウェグナーが1953年にデザインした未発表の椅子「PP101」を初めて発表した。長らく知られることのなかったこの椅子は、70年以上を経て現代に蘇った。
会場となったのは、デザインデュオAhm & Lundが改装を手掛けたPP Møblerの旗艦店である。空間にはウェグナーの名作と並んでPP101が展示され、まるで「隠された宝物」のように紹介された。

PP101は、1949年に発表された「ザ・ラウンド・チェア」に対するシンプルな応答として構想された。水平にカーブした背もたれや、手編みのリネンウェビングによる座面、ウェビングの張力を支える前方の貫などが特徴で、ウェグナーの彫刻的な感覚と人間工学的な研究の成果が表れている。
この復活を導いたのは、PP Møbler三代目のキャスパー・ホルスト・ペダーセン氏である。彼はオリジナルの図面をもとに忠実な再現を進め、「真正性の追求」を掲げて制作を実現させた。1953年にデザインと工房がともに生まれていながら、72年間交わらなかった両者がようやく結びついた瞬間だった。

PP101は「エレガントで手の届きやすいダイニングチェア」として位置づけられ、ウェグナーが生涯追い求めた「純化と簡素化」の哲学を体現している。その軽やかな佇まいと均整の取れたバランスは、今もなお新しいクラシックとしての存在感を放っている。
PP101とは
ハンス・J・ウェグナーが1953年に描いた構想をもとに、2025年に初めて形となった椅子である。PP Møblerの手によるこの発表は、ウェグナー作品における欠けたピースを補完し、デンマークモダニズムの精神を再確認させるものとなった。PP Møblerとハンス・J・ウェグナーの出会いが結実したPP101は、過去と現在をつなぐ新たな象徴として語り継がれていくだろう。