私が好きな椅子 vol.2 / ザ・チェア.JH503


北欧家具を代表する椅子として、必ず名前が挙がるのが、Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)のザ・チェアです。

この椅子の凄さは、単なる美しさだけではありません。ウェグナーの素材への理解、構造への理解、そしてデンマーク木工文化そのものが極めて高いレベルで形になっています。

背からアームへ自然に流れるライン、滑らかに接合された木部、そして構造そのものを美しさとして成立させている点。ザ・チェアには、木がどこで力を受け、どう支えるべきかを理解した上で設計された痕跡が随所に残っています。特に背の契りは象徴的で、補強でありながら意匠としても成立しています。構造を隠すのではなく、美しさとして見せているところに、ウェグナーらしさがあります。

また、この椅子は木目の美しさを自然に感じられるデザインになっています。削りや接合だけではなく、木目の流れまで含めて美しく見えるように製造されている。素材を単なる材料としてではなく、木そのものの表情として扱っているところにも、ウェグナーの深い素材理解が表れています。

さらに、この椅子はウェグナー一人で成立したものではありません。ヨハネス・ハンセン工房の高い木工技術があったからこそ、この構造と完成度が実現しています。本当に良いものを作ろうとして試行錯誤した、デザイナーと職人たちの想いが、そのまま形として残っている椅子です。そして、その思想と技術は現在もPPモブラーへ受け継がれています。

そして1960年のケネディ・ニクソン討論会で使用されたことで、ザ・チェアはアメリカ市場で大きな成功を収め、デンマーク家具を世界へ広げた象徴的存在となりました。私は、このエピソードもとても好きです。本当に良いものを作ろうとして積み重ねられた思想や技術は、時代や国を越えて伝わっていくのだと思います。

現在見ても古さを感じません。ザ・チェアには、流行ではなく、素材、構造、身体との関係を真剣に追求した時代の空気が今も残っています。

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