FH4283 Chinese Chair | チャイニーズチェア


ABOUT

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year:1944年
Material:Rosewood / Mahogany / Solid Cherry / Black Ash(無垢チェリー材/ブラックアッシュ材)、Leather(レザー)
Size:W55 × D55 × H82 cm / SH45 cm / AH68 cm


STORY

1944年、ハンス・J・ウェグナーがフリッツ・ハンセンのためにデザインした「チャイニーズチェア」は、彼のキャリアにおける重要な転換点となった作品です。中国明時代の伝統椅子「圏椅(クワンイ)」から着想を得つつ、西洋の機能主義と東洋の優雅な曲線美を融合。無垢材を贅沢に使用し、滑らかな笠木や有機的な肘掛けなど、熟練の指物技術が存分に発揮されています。
 

本作の製造において特筆すべき技術が、接合部に用いられたフィンガージョイントです。これは複数の指のように噛み合う形で木材を組み合わせる工法で、高い強度と美しい意匠性を兼ね備えています。ウェグナーはこの構造を、椅子の耐久性を高めると同時に、装飾的なディテールとしても活かしました。精密な加工と職人の技術が求められるこの手法は、チャイニーズチェアの品質を象徴する要素の一つです。
 

フリッツ・ハンセンのコレクションにおいて「唯一の無垢材の椅子」である点は特筆すべき特徴です。同社は積層合板や曲げ木の技術で知られますが、本作の製造にあたってはウェグナーの哲学を尊重し、素材の質感と生命力を活かす構造を採用しました。初期モデルFH4283はチェリー材と革張り座面を備え、軽やかで装飾的な佇まい。翌年発表されたFH1783(後のPP66)はブナ材とペーパーコード座面を用い、より堅牢でデンマークらしい実用美を備えています。
 

さらに、チャイニーズチェアにはこの2モデル以外にも合計9種類のバージョンが存在し、素材や構造、細部の意匠が異なります。これらはフリッツ・ハンセン製・PPモブラー製を含む様々なメーカーや年代で展開され、コレクターの間で比較検証の対象となっています。それぞれのバージョンは共通のデザイン言語を持ちながらも、時代背景や製造技術の進化を反映した独自性を備えています。
 

2024年にはデザイン80周年を記念し、世界80脚限定のアニバーサリーモデルが登場。最高級ヨーロピアンチェリーウッドとナチュラルレザーを組み合わせ、各脚にはシリアルナンバーが刻まれました。その価格は約138万円(税抜)と、コレクターズアイテムとしての価値を明確に示しています。
 

ウェグナーが掲げた「あらゆる角度から美しい」という理念は、この椅子の彫刻的フォルムに息づき、現代でもなお普遍的な魅力を放ち続けています。ヴィンテージ市場でも高い評価を受け、特にローズウッド仕様など希少モデルは美術館級の価値を持つとされています。

 

圏椅(クワンイ)

 

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