About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Plan møbel(プランモブラー) / Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1948, 1950s
Material: Oak, Teak, Leather, Stainless steel
Size: 幅 61–74 × 奥行き 54–71 × 高さ 73–85 cm
Story
ハンス・J・ウェグナーの作品群の中で、スイベルチェア(回転椅子)は数少ない試みです。伝統的な木工技術に裏打ちされた彼の造形哲学が、スチールや回転機構といった工業的要素と交わる稀有な領域に位置しています。
その先駆けとなるのが、1950年代にプランモブラー社で製造された「B621」です。クロムスチールや積層ブナ材、レザーを用いたこの椅子は、ウェグナーが木材中心のデザインから一歩踏み出し、オフィス家具の新しい可能性を探った初期的実験といえます。現存数が極めて少なく、コレクター市場において高い希少性を誇ります。
もう一つの重要な椅子が、1948年のデザインに基づいてカール・ハンセン&サンによって復刻された「CH621」です。これはウェグナーが早くからオフィスチェアに人間工学的視点を導入していたことを示すものであり、現代版ではガスリフト機構を備え、また現代の安全基準に沿って4本脚キャスターから5本脚キャスターに変更がされています。当時のデザインを忠実に再現しつつ現代の使用環境にも適応しています。
こうしたスイベルチェアは、ウェグナーが生涯をかけて模索した「自然素材と工業素材の調和」というテーマを象徴しています。B621が実験的な萌芽であったのに対し、CH621は完成度の高いプロダクトとして、ホームオフィスから公共空間まで幅広く活躍する存在となっています。