Story
エリック・ヨーエンセン(Erik Jørgensen, 1928–1998)が1954年に設立した工房は、デンマーク・モダンの世界で「張り職人の名門」として広く知られている。彼はもともと馬具職人および家具張り職人として訓練を受け、その経験が革や布地に対する独自の感性を培った。この背景が、後の家具製造において決定的な役割を果たした。
工房はスヴェンボーを拠点に、創業当初は家具の張り替えを中心に活動した。小さな修理工房での地道な仕事は、品質第一という理念を早くから確立し、後のデザイン家具製造における信用の基盤となった。やがて彼らは、単なる張り替え工房から脱し、著名デザイナーの作品を実現するパートナーへと成長していった。
ハンス・J・ウェグナーの「オックスチェア」やポール・M・ヴォルタの「コロナチェア」といった、製造困難とされた革新的デザインの復活に成功したのは、エリック・ヨーエンセン工房の卓越した技術にほかならない。さらに1970年に発表された「EJ220 ソファ」によって、自社ブランドの確立にも成功し、張り職人からデザインメーカーへの転身を果たした。
2020年、フレデリシア・ファニチャーに買収されたことにより、工房は新たな段階に入った。現在では「Eric Jørgensen Collection」として展開され、張りぐるみの専門性と職人技が保存・継承されている。デザインのビジョンとクラフツマンシップの融合を象徴する工房として、そのレガシーは今もなお国際的に高く評価され続けている。
About
Year:1954–現在(2020年よりFredericia傘下)
President:Erik Jørgensen、Niels Jørgensen
Designer:Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)、Poul M. Volther(ポール・M・ヴォルタ)、Hans Wetzstein(ハンス・ウェッツスタイン)、Foersom & Hiort-Lorenzen(フォーサム&ヒオルト=ローレンツェン)、Patrick Norguet(パトリック・ノルゲ)
Place:スヴェンボー
History
1928:Erik Jørgensenがデンマークに生まれる
1940年代:馬具職人および家具張り職人として訓練を受ける
1954:フュン島スヴェンボーに「Erik Jørgensen Møbelfabrik」を設立
1950年代後半:家具の張り替え工房として地域で高い評価を得る
1960:Hans J. WegnerがOx Chairを発表、当初はAP Stolenで短期間製造
1964:Poul M. VoltherがCorona Chairを発表、製造困難により普及せず
1970:創業者デザインによる「EJ220 ソファ」を発表、自社ブランド確立の契機となる
1975:Erik Ole Jørgensenが「EJ315 ソファ」をデザイン、名作として評価を得る
1980年代:工房がデザインブランドとして国際的に認知され始める
1989:Erik Jørgensen工房がOx Chairの再生産を開始、Cold Cure Foamを導入して製造を可能にする
1990年代:Corona Chairを復刻、再評価を受けて国際的なアイコンとなる
1997:コロナチェアが国際的なデザインフェアで再発表され、注目を集める
1998:創業者Erik Jørgensenが死去、息子Niels Jørgensenが後継者となる
2000年代:Hans Wetzsteinによる「Delphi Sofa」、Foersom & Hiort-Lorenzenによる「Eyes Chair」などを発表
2010年代:Patrick Norguetによる「Asko Chair」を発表、国際的デザイナーとの協業を継続
2020:Fredericia Furnitureが買収、ブランドは「Eric Jørgensen Collection」として存続
2020年代:フレデリシアの流通網を活用しつつ、張り職人技術の保存に注力
Furniture
・EJ220 Sofa
・EJ315 Sofa
・Ox Chair | オックスチェア
・Corona Chair | コロナチェア
・Delphi Sofa
・Eyes Chair
・Asko Chair
Imprint/Label
・「Erik Jørgensen Møbelfabrik」のラベルが背面や座面下に貼付される
・製品によっては「design: Hans J. Wegner」「design: Poul M. Volther」などデザイナー名が明記される
・近年の製品には「Fredericia」ブランドと併記されたラベルが用いられる