Story
ソーレン・ヴィラドセン家具工房(Søren Willadsen Møbelfabrik)は、デンマーク・モダンの黄金期を支えた重要な工房のひとつです。1904年にデンマーク西部のヴェイエンに設立され、当初は小規模な注文家具工房として出発しましたが、やがて工業的な規模での生産へと発展しました。
職人技と企業家精神を兼ね備えたソーレン・ヴィラドセンは、その「信頼に足る人柄」と優れた技術によって、フィン・ユール、ナンナ&ヨルゲン・ディッツェル、クリスチャン・ヴェデルといった名だたるデザイナーたちと緊密な協業関係を築きました。特にフィン・ユールとの協業によって生まれたSWシリーズは、デンマークモダンを象徴する作品群として知られています。
工房は家庭用家具にとどまらず、ホテルやフェリーのインテリア、さらには映画セットに至るまで幅広い分野に作品を提供しました。その製品は、独創的でありながら高い実用性を兼ね備え、デンマーク家具産業の発展に大きく寄与しました。1979年に工場が閉鎖されるまでの75年間、ヴィラドセン工房は「デザイナーの夢を実現する工房」として名を刻み続けました。
近年では、フィン・ユール財団による「ヴィラドセン・シリーズ」の復刻が進められており、ヴィラドセンの名は再びデンマーク家具史の重要な柱として評価されつつあります。
About
Year:1904–1979
President:Søren Willadsen、J.D. Ravaetz
Designer:Finn Juhl(フィン・ユール)、Nanna & Jørgen Ditzel(ナンナ&ヨルゲン・ディッツェル)、Christian Vedel(クリスチャン・ヴェデル)、Illum Wikkelsø(イルム・ヴィッケルソー)、Kai Kristiansen(カイ・クリスチャンセン)ほか
Place:Vejle
History
1904:ソーレン・ヴィラドセンがヴェイエンに家具工房を設立
1912:事業形態を大規模工業生産へ転換
1930:家庭用木製家具の生産を拡大
1940:ホテルや公共施設向けの大型家具プロジェクトに参入
1947:J.D.ラワエツが共同経営者として参加、工房体制を強化
1950:フィン・ユールと協業を開始、SW50シリーズを製作
1951:フィン・ユールとの協業についてユーモラスな逸話を残す
1955:SW96アームチェアを発表、後に代表作として高く評価される
1958:ナンナ&ヨルゲン・ディッツェルと協業、「ND93」デスクを製作
1960:カイ・リングフェルト・ラーセンのデザインを製作開始
1961:イルム・ヴィッケルソーとの協業によりソファシリーズを生産
1963:クリスチャン・ヴェデルの「モダス」シリーズを製作開始
1965:ホテル・スヴェンボーなど商業施設向け家具を多数供給
1966:映画作品用のセット家具を製作、国際的な注目を浴びる
1967:アルネ・ヤコブセンとモジュラー家具の試作を行う
1968:ベルント・ペーターセンとの協業を記録
1970:輸出市場へ積極的に参入、欧州各国に家具を供給
1972:フェリー船内用家具を大量生産
1974:高級ホテル向けプロジェクトが評価され国際的に拡大
1976:工場設備を拡張、最新機械を導入
1979:工場が解体され、ソーレン・ヴィラドセン家具工房が閉鎖
Furniture
・SW50 Sofa | ソファ
・SW50 Lounge Chair | ラウンジチェア
・SW96 Armchair | アームチェア
・ND93 Desk | デスク
・ND83 Chair | チェア
・Modus Armchair | アームチェア
・Modus Stool | スツール
・Modus Coffee Table | コーヒーテーブル
・Oak Sofa by Illum Wikkelsø | ソファ
・Highback Easy Chair by Kai Kristiansen | イージーチェア
・Rosewood Armchair by Kai Kristiansen | アームチェア
Imprint/Label
・座面裏に「Søren Willadsen Møbelfabrik」の焼印が押される例がある
・1950年代後半以降は紙ラベルも用いられ、デザイナー名とモデル番号が記載されることもあった
・SWシリーズの一部には、金属プレートによるラベルが貼付された事例がある
・輸出向け製品には、英語表記の「Made in Denmark」ラベルが多く使われた
・年代によってラベルデザインが変化し、ヴィンテージ評価の手掛かりとなっている