Story
P. Lauritsen & Søn は、1950年代から1970年代初頭にかけて活動したデンマークの家具工房であり、ボーエ・モーエンセンとの緊密な協業によって知られています。彼らは大規模なメーカーのように商業的な拡大を志向するのではなく、職人的な精度と誠実さをもってデザインを具現化することに専念しました。
その拠点はオールストルップという地方都市にあり、デンマーク家具産業の中心地からは距離がありました。しかし、この立地こそが、流行や大量生産の潮流から離れ、純粋に木工の技術に向き合うための環境を生み出していました。彼らは「Møbelsnedkeri」として、指物師的な伝統を受け継ぎながら、現代的なデザインと精緻なクラフツマンシップを結びつけました。
特にボーエ・モーエンセンとの協業において、P. Lauritsen & Søn はプロトタイプや少数限定の製造を担い、ローズウッドやチークといった最高級材を用いたマスターピースを世に送り出しました。チェストやキャビネット、籐を編み込んだチェアなどは、堅牢さと美しさを兼ね備え、今日でもコレクターズアイテムとして高く評価されています。
モーエンセンの死後、工房の活動は途絶えましたが、その家具は「誠実なる木工の詩学」として今なお語り継がれています。小規模工房でありながら、彼らが残した遺産はデンマークモダンのもう一つの重要な側面を物語っており、工業的な生産だけでは語り尽くせないデンマーク家具の深層を伝えているのです。
About
Year:1950年代–1973頃
President:P. Lauritsen
Designer:Børge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)
Place:オールストルップ
History
1950:P. Lauritsen & Søn がデンマーク・オールストルップで活動を開始
1957:BM 57チェスト、BM 62チェアなどボーエ・モーエンセンの初期モデルを製造
1958:BM 60ダイニングテーブル、BM 61チェアを製造
1960:BM 64 Tallboy(8段チェスト)を製造、収納家具シリーズを拡充
1962:BM 66デスクを製造、職人技と機能美を融合した作例が登場
1963:モーエンセンがFredericiaと並行してP. Lauritsen & Sønとの協業を継続
1965:ローズウッドを用いたキャビネットやバーキャビネットを製造
1967:籐張り仕様のBM 61/62チェアが輸出市場で注目を集める
1969:モーエンセンの新たな収納家具シリーズを試作、限定生産品を製作
1970:BM 71ライブラリーテーブルを製造、モーエンセンの多用途家具思想を反映
1971:BM 80ワークデスクのプロトタイプを製作開始
1972:ボーエ・モーエンセン死去、工房にとって大きな転機となる
1973:BM 81ダイニングセットの生産を完了、モーエンセンとの最後の協業作となる
1974以降:工房の活動記録が途絶え、事実上閉鎖されたと推定される
Furniture
・BM 57 Chest of Drawers
・BM 59 Sideboard
・BM 60 Dining Table
・BM 61 Dining Chair
・BM 62 Armchair
・BM 64 Tallboy
・BM 66 Desk
・BM 71 Library Table
・BM 80 Work Desk
・BM 81 Dining Set
・Rosewood Bar Cabinet