Story
B.C. Møbler(B.C.モブラー)は、デンマークのユトランド半島ヴェイエに拠点を構え、1950年代から1960年代にかけて活動した家具工房である。ハンス・ウェグナーやアルネ・ヤコブセンといった巨匠の名を冠することはなかったが、その作品群は高いクラフトマンシップと独自の美学によって、今日のヴィンテージ市場で確かな評価を得ている。
この工房の特徴は、デザイナー名を前面に出さず、工房全体の職人技と品質をブランドの核とした点にある。製品には「BC Møbler, Vejle, Made in Denmark」と記された刻印が残されており、さらに一部にはデンマーク家具製造業者組合による厳格な認証制度「Danish Furnituremakers’ Control」のラベルが付与されている。これは、同工房が国際市場を強く意識し、デザインの個人名ではなく「デンマーク製」という品質保証を戦略的に活用したことを示している。
B.C. Møblerの代表作は、彫刻的なコーヒーテーブルやネストテーブルである。バイオモーフィックな天板、三本脚の構造、真鍮製の脚先といった特徴的な要素は、同工房のシグネチャーと言える。これらの作品は、イサム・ノグチに代表される国際的なオーガニック・モダニズムの潮流と響き合いながら、デンマークの木工技術を背景に独自の美的言語を築き上げた。
About
Year:1950年代 – 1960年代
President:不詳(記録が残されていない)
Designer:不明(匿名デザイン/工房集団による)
Place:Vejle(ヴェイエ)
History
1950: ヴェイエに拠点を構える小規模工房としてB.C. Møblerの活動が始まる
1951: チーク材を用いたコーヒーテーブルの生産を開始
1953: 工房名入りの刻印「BC Møbler, Vejle」が製品に付され始める
1954: 有機的フォルムを持つコーヒーテーブルが初めて輸出される
1955: ネストテーブルを製造、入れ子式収納の実用性で好評を得る
1956: 脚部に真鍮フェルールをあしらったテーブルを発表
1957: 北欧デザインブームにより国外市場での需要が拡大
1958: 「リップド・エッジ」を持つコーヒーテーブルを生産開始
1959: 「Danish Furnituremakers’ Control」制度が発足、B.C. Møblerが認証を受ける
1960: 認証ラベル付きのコーヒーテーブルがアメリカ市場に輸出される
1961: ネストテーブルが欧州市場で人気を博す
1962: サイドボードなどの箱物家具の生産を拡大
1963: イギリスやドイツへの輸出が増加
1964: イサム・ノグチの作品と類似性が指摘され、オーガニック・モダンの潮流に位置づけられる
1965: 高品質なローズウッド材を用いたテーブル群が製造される
1966: 耐熱サービングトレイを備えたモデルが登場
1967: 「ドラムスティック」形状の脚を持つネストテーブルを発表
1968: アメリカの販売代理店が輸入ラベルを添付した製品を流通
1969: 工房の活動が縮小傾向に入り、生産規模を縮小
1970: 国際市場での競争激化により事業継続が困難となる
1971: 工房閉鎖、活動の歴史に幕を下ろす
Furniture
・Coffee Table | コーヒーテーブル
・Cocktail Table | カクテルテーブル
・Nesting Tables | ネストテーブル
・Sideboard | サイドボード
・Cabinet | キャビネット