Story
Danexは、1960年代から1970年代初頭にかけて活動したデンマークの家具工房であり、黄金時代のデンマーク・モダンを支えた小規模工房の一つです。フリッツ・ハンセンやカール・ハンセン&サンといった大手メーカーほどの知名度は持たなかったものの、その製品は素材の誠実さ、機能的なデザイン、そして職人技の精緻さを体現していました。
この工房を語る上で不可欠なのがデザイナー、ヘニング・ソーレンセンの存在です。彼の作品、とりわけチークやローズウッドを用いたダイニングチェアは、Danexの工房アイデンティティそのものを形成しました。彼は幅広いジャンルを手掛けるのではなく、特定の家具類型に集中し、緻密で彫刻的なフォルムを完成させたデザイナーでした。
Danexの製品は、刻印やラベルといった識別が乏しいため、今日ではコレクターや専門家の目利きによってその真正性が判断されることが多いのが特徴です。しかし、1968年に製作されたソーレンセンの椅子がデザインミュージアム・デンマークに収蔵されている事実は、同工房の文化的・歴史的価値を強固に裏付けています。
さらに、ソーレンセンは同時期にVamdrup Stolefabrikでも類似デザインを提供していた記録が残っており、この関係性はデンマーク家具産業の流動的な協業構造を示す好例でもあります。Danexは、決して大規模ではないながらも、黄金時代の多様性と厚みを支えた「静かな名工房」として位置づけられるべき存在です。
About
Year:1960年代~1970年代初頭
President:不明
Designer:Henning Sørensen(ヘニング・ソーレンセン)
Place:デンマーク(Denmark)
History
1960:Danexがデンマークで家具製造を開始
1965:ヘニング・ソーレンセンがデザインしたチーク材ダイニングチェアを製造開始
1968:代表作のダイニングチェアが発表され、デザインミュージアム・デンマークに収蔵される
1969:ソーレンセンのデザインによるローズウッド材モデルが製作される
1970:Vamdrup Stolefabrikとの関係性が指摘される椅子のデザインが市場に流通
1971:Kvadrat社のファブリックを用いた張り替えモデルが登場
1972:Danex製品がヨーロッパ市場に輸出される
1973:活動が縮小し、工房としての記録が途絶える
Furniture
・Dining Chair Model 1968 | ダイニングチェア
・Dining Chair Rosewood Model | ダイニングチェア
・Armchair Model 1970 | アームチェア
・Side Chair Model 1971 | サイドチェア