Story
Feldballes Møbelfabrik(フェルドバレス・モブラー)は、デンマーク第2の都市オーフスに拠点を構えた家具工房であり、その名はデザイナー、カイ・クリスチャンセンとの緊密な協業によって不朽のものとなりました。
同工房は、フリッツ・ハンセンやカール・ハンセン&サンといった大手メーカーのように企業規模で語られることは少ないものの、1950年代から1960年代にかけてデンマークモダンの黄金期を代表する家具を数多く生み出しました。その中心にあったのは、収納家具、デスク、そしてウォールユニットといった分野での卓越したクラフトマンシップでした。
フェルドバレスは、企業としての歴史的記録が断片的であるため「謎めいた工房」と呼ばれることもあります。しかし、「FM」のロゴで知られるラベルや刻印が真正性を示す印として愛好家に広く認識されており、その職人技は確かな評価を得てきました。
カイ・クリスチャンセンとの協業により、フェルドバレスは収納家具の分野で革新を遂げました。1957年に発表された「FM Reolsystem」は、ユーザーの自由な構成を可能にしたモジュラー式のウォールユニットであり、国際的にも大きな成功を収めました。また、Model 70デスクに代表される一連のデスクは、実用性と美学を兼ね備え、今日に至るまで高い評価を受けています。
フェルドバレスの家具は、チークやローズウッドといった高級木材を駆使し、蟻組接ぎや彫刻的な取っ手など精緻なディテールを特徴としています。そのデザインは「浮遊感」を漂わせ、同時に人間工学的な配慮を体現するものでした。
工房の物語は多くの点で不明瞭ですが、残された家具そのものがフェルドバレスの真の歴史を語っています。そこには、カイ・クリスチャンセンのデザイン哲学と工房の職人技の融合が結晶化しており、今日のヴィンテージ市場でも高い人気を誇ります。
About
Year:1950年代〜1960年代
President:S.B. Feldballe(推定)
Designer:Kai Kristiansen(カイ・クリスチャンセン)
Place:Aarhus(オーフス)
History
1950年代:Feldballes Møbelfabrik設立、オーフスを拠点に家具製造を開始。
1954 Model 54 デスク発表、チーク材を用いた初期の代表作として評価される。
1955 カイ・クリスチャンセンがデザインスタジオを設立、同工房との協業を開始。
1957 FM Reolsystem ウォールユニット発表、モジュラー式収納家具として国際的成功を収める。
1958 Model 70 デスク発表、両面使用可能なエグゼクティブデスクとして人気を博す。
1960年代前半 ローズウッドやチーク材を用いたサイドボードやチェストを多数製作。
1960年代後半 市場で「FM」のロゴが定着、真正性の証として認識される。
1970年代以降 工房の記録が途絶え、活動終了時期は不明。
Furniture
・Model 54 Desk
・Model 59 Desk
・Model 70 Desk
・FM Reolsystem | ウォールユニット
・FM 52 Chest
・Sideboards
・Dressers
・Cabinets