Story
飛騨高山のキタニは、日本の伝統工芸とデンマークモダンデザインを結びつけた稀有な存在です。飛騨の地は古くから「飛騨の匠」と呼ばれる木工の名人を輩出してきました。その深い木への理解と高度な接合技術が、デンマークの巨匠たちの作品を蘇らせる基盤となりました。
1967年に鍋島甚三郎商店の子会社として設立されたキタニは、当初は多角的な事業を展開していました。しかし、椅子張り用ウレタンフォームや縫製の仕事を通じて家具製造に踏み込み、やがて自らの製品開発を始めました。三代目社長・田中清文氏のリーダーシップの下、1990年に独立し、国際的なデザインを積極的に取り入れる姿勢を打ち出しました。
1994年のデンマーク視察旅行が転機となり、北欧の家具文化を学ぶために大量の中古家具を買い付け、分解研究を通じてデザインの本質に迫りました。この実践的な教育が、キタニを世界的に認められる工房へと押し上げました。
今日では、イプ・コフォード・ラーセン、ヤコブ・ケア、ナナ・ディッツェルら巨匠の作品をライセンス生産し、かつてデンマーク本国でも途絶えかけた技術を継承しています。さらにフィン・ユール邸を高山に再現するなど、単なる家具メーカーを超えて文化的な継承者、教育者としての役割を果たしています。
キタニは「再現」を超え、デンマークモダンデザインを未来へと生きた形で継承する守護者として存在しているのです。
About
Year:1967-現在
President:田中清文、田中新也
Designer:Ib Kofod-Larsen(イプ・コフォード・ラーセン)、Jacob Kjær(ヤコブ・ケア)、Finn Juhl(フィン・ユール)、Sigurd Ressel(シグード・レッセル)、Nanna Ditzel(ナナ・ディッツェル)、Bent Andersen(ベント・アンデルセン)
Place:Takayama(高山)、Japan(日本)
History
1967:株式会社鍋島甚三郎商店の子会社として設立
1970:家具用ウレタンフォーム、梱包材の取り扱いを開始
1975:椅子張り加工や縫製業務を地元メーカーから受託
1983:「家具開発委員会ムーチンクラブ」を設立し自社家具の製造を開始
1990:鍋島グループから独立、田中清文が代表取締役社長に就任
1990:古民家を改装したギャラリー「農楽」で初の個展を開催
1992:デンマーク在住の岡村孝デザインによるソファを発表
1994:デンマーク視察旅行を実施、中古家具の大量購入を行う
1995:工房にてデンマーク家具を分解研究し技術を蓄積
1996:デンマーク家具の修理依頼が全国から集まり始める
1998:イプ・コフォード・ラーセン作品のライセンス生産を開始
2000:ヤコブ・ケア作品「プリンセスデスク」「ウィングバックチェア」を復刻
2002:フィン・ユール未亡人ハンネ夫人とライセンス契約を締結
2005:ナナ・ディッツェル作品の復刻生産を開始
2008:ベント・アンデルセン作品の革張り技術を導入
2010:シグード・レッセル作品の日本向けアレンジモデルを開発
2012:高山市に「フィン・ユール邸」を再現オープン
2015:「Japan Forest Project」を始動、日本の銘木を用いた製作を開始
2017:設立50周年記念事業を開催
2019:国際的展示会でキタニ製品が高評価を獲得
2021:フィン・ユール財団の方針転換によりNo.53チェアのライセンス終了
2022:飛騨高山でフィン・ユール展を主催
2023:世界各国の美術館やコレクターがキタニ製家具を収蔵
2024:国内外で「Japan Forest Project」作品を発表
Furniture
・Elizabeth Chair IL-01 | エリザベスチェア
・Easy Chair IL-10
・Princess Desk JK-115PDK | プリンセスデスク
・Wing Back Chair JK-09 | ウィングバックチェア
・No.53 Chair FJ-01 / FJ-02 | No.53チェア
・Arm Chair SR-01
・Arm Chair SR-02
・Easy Chair ND-01
・Arm Chair BA-01