本展は、北欧デザインを代表する巨匠ハンス・ウェグナー(1914–2007)の創作活動に焦点を当てた大規模な回顧展です。家具研究者・織田憲嗣氏が半世紀以上にわたり収集してきた織田コレクションから、名作椅子を中心とする約160点が展示されます。ウェグナーの初期から晩年に至るまでの作品を一望することで、そのデザイン思想とクラフツマンシップの核心に迫ることができます。
会場では「ザ・チェア」のプロトタイプや籐を巻いた初期モデルを含む複数のバリエーションが公開され、素材や構造の違いを比較できる構成となっています。さらに現存しない「ファーストチェア」「セカンドチェア」など初期の希少な椅子の復刻版も特別出品され、デザインの発展過程を直に感じ取ることができます。
加えて、原寸大の図面や製作資料、当時の映像なども紹介され、デザインが生まれる背景や職人たちの技術に触れられる点も見どころです。作品に座って体験できるコーナーも設けられ、ウェグナーの椅子が持つ快適性と美しさを五感で味わうことができます。
展覧会は、単なる作品紹介にとどまらず、デンマーク・モダンの精神と人間工学的探求が融合したウェグナーの思想を読み解く場となっています。普遍的なデザインの価値を再発見する機会として、多くの来場者に新たな気づきを与えてくれるでしょう。
会期・会場
会期:2025年12月2日(火)~2026年1月18日(日)
会場:渋谷ヒカリエ9F ヒカリエホール
ハンス・ウェグナーとは
ハンス・ヨルゲンセン・ウェグナーは、20世紀を代表するデンマークの家具デザイナーです。生涯で500脚を超える椅子を生み出し、そのうち100脚以上が量産化されたことから「椅子の王」と称されました。素材を深く理解する職人としての素養と、造形美と機能性を融合させる独自の哲学を兼ね備えた人物です。
代表作には「Yチェア」「ザ・チェア」「ピーコックチェア」などがあり、いずれも有機的なフォルムと快適性を両立させた作品として世界中で高く評価されています。ウェグナーのデザインは、日常の道具である椅子を芸術的水準にまで高め、人と家具、そして空間との関係を豊かにすることを目指していました。