Story
Sofus Jørgensen の名は、デンマーク家具史において二重の意味を持っています。ひとつは実在したマイスター・スネーカー、すなわち指物師 Sofus Jørgensen(1867–1929)がシルケボーで創業した工房です。1892年から1969年まで続いたこの工房は、建築内装や特注家具の製作を中心に、高い職人技を誇る存在として地域社会に根を下ろしました。
もうひとつは、1950年代から1960年代にかけて活動したとされるミッドセンチュリーモダンのデザイナー「Sofus Jørgensen」です。彼に帰属されるハイボードやサイドボードは、高品質なチークやローズウッドを用い、そり脚や真鍮のディテールといった特徴的な意匠を備えています。しかしながら、このデザイナーの実在は確認されておらず、メーカーの刻印や一次資料も発見されていません。
したがって、Sofus Jørgensen という名は、歴史的に裏付けられた工房の物語と、市場において帰属が定着したモダン家具の物語が交錯する特異なケーススタディとして位置づけられます。その謎めいた存在は、デンマーク家具史における記録と記憶のあいだに横たわる断絶を示すものでもあります。
About
Year:1892–1969
President:Sofus Jørgensen
Designer:Sofus Jørgensen
Place:Silkeborg(シルケボー)
History
1892: Sofus Jørgensen がシルケボーに移り、Joh. Manly の工房を継承
1893: Tværgade 通りで Snedkerfirmaet Sofus Jørgensen として正式に創業
1900: 地域で最も大規模な指物工房のひとつとして成長
1905: 銀行内装や特注家具の製作を請け負い始める
1910: 「på valsen」と呼ばれる職人修行を終えた徒弟が工房に参加
1915: 地元シルケボーの製紙業との関係を強化し、企業依頼を拡大
1919: 徒弟 Ernst Kusk が入社し、工房の教育制度を証言として残す
1920: A. Rosen 建築家と協業し、特注家具を製作
1923: シルケボー市庁舎増築に伴い、家具一式を納品
1925: 建築家 Bendixen と市庁舎家具の設計で協力
1927: Darr 社の依頼でバスの木工部品を製作開始
1929: 創業者 Sofus Jørgensen が死去
1930: 息子や徒弟により工房が継続される
1935: Hjørring の銀行の家具内装を手掛ける
1940: Frederikshavn の銀行内装を受注
1945: 戦後復興期に建築内装と家具の需要が増加
1950: DAB 社との協業が続き、バス部品の製造を拡充
1955: シルケボーにおける工業都市化の波に適応し、事業を拡大
1960: Knud Sørensen ら建築家との協業が再び模索される
1965: 工房の経営継承問題が顕在化
1969: 徒弟たちが継続を望まず、工房は閉鎖
1970以降: 家具部門は Thorsen 社に引き継がれる
Furniture
・Highboard
・Sideboard
・Credenza
・Bookcase
・Dining Table
・Dining Chair
・Armchair
・Writing Desk
・Cabinet
・Coffee Table