Story
エリック・アンデルセンとパレ・ペダーセンは、20世紀半ばのデンマーク・モダンを代表する「静かなる巨匠」として位置づけられるデザインデュオです。彼らの名前は同時代の巨匠たちに比べると広く知られていませんが、Randers MøbelfabrikやHorsnæs Møblerといった重要な工房との協業を通じて、数々の名作を生み出しました。
彼らの作品は、素材である木材そのものへの深い敬意に基づき、無垢のチークやオークを使用しながらも、時にはローズウッドの象嵌といった装飾的な要素を加えることで、機能性と芸術性を両立させました。これらのディテールは、デンマークの家具職人の伝統に根差した高度な技術力を示すものでした。
また、彼らは構造的な合理性を隠さず強調する「構造的表現主義」を特徴とし、ほぞや接合部をあえてデザインの要素として見せることによって、家具の内部構造そのものを美的価値に昇華しました。これは、彼らが工芸的な誠実さを重視しつつ、デザインをより建築的・彫刻的に発展させた証拠といえます。
Randers社向けには、幾何学的で建築的なフォルムのダイニングチェアを設計し、Horsnæs社向けには、流動的で有機的なフォルムを持つラウンジチェアを手掛けるなど、状況に応じてデザイン言語を柔軟に変化させました。この多才さは、彼らの最大の強みであり、同時代の他のデザイナーとの差別化要因でした。
彼らの個人史はほとんど知られていませんが、残された作品群はデンマーク・モダンの理念を見事に体現し続けています。その匿名性ゆえに評価が遅れてきたものの、近年ではオークションやコレクションを通じて再評価が進み、彼らの名は改めて「静かなる巨匠」として語られるべき存在となっています。
About
Year: 活動期 1950年代~1970年代
Place: Randers(ランナース)、Horsens(ホーセンス)
Manufacturer: Randers Møbelfabrik(ラナース・モーベルファブリック)、Horsnæs Møbler(ホースネス・モブラー)、Moreddi Inc.(米国ロングビーチ)
History
1950年代:Randers Møbelfabrikと協業を開始し、初期のダイニングチェアを製作。
1960年頃:ローズウッド象嵌を施した背もたれを持つ椅子を発表。
1962年:アーム付きダイニングチェアのバリエーションを設計。
1963年:米国特許を取得。Moreddi Inc.との協業が始まり、アメリカ市場向けに輸出を拡大。
1963年8月:Horsnæs Møblerの広告に「Andersen & Pedersen」名義でソファやテーブルが掲載。
1960年代後半:Horsnæs社からチーク材を用いた有機的なラウンジチェアを発表。
1970年代:オットマン付きのラウンジセットを製作。快適性を重視したリビング向け家具を展開。
1990年代以降:作品がヴィンテージ市場で高く評価され始める。
Furniture
・Dining Chair | ダイニングチェア(Randers Møbelfabrik, 1962-63頃)
・Arm Dining Chair | アームチェア(Randers Møbelfabrik, 1960年代)
・Easy Chair / Lounge Chair | イージーチェア/ラウンジチェア(Horsnæs Møbler, 1960年代)
・Armchair & Ottoman | アームチェア&オットマン(Horsnæs Møbler, 1960年代)
・Sofa | ソファ(Horsnæs Møbler, 1963年頃)
・Coffee Table | コーヒーテーブル(Horsnæs Møbler, 1963年頃)