Hanne Kjærholm | ハンネ・ケアホルム


Story

ハンネ・ケアホルム(1930–2009)は、デンマーク建築界における女性パイオニアとして大きな足跡を残した建築家です。彼女は「抑制の効いたモダニズム」と呼ばれる静謐で精緻な建築を生み出し、同時に男性優位だったデンマーク建築界において女性が専門職として活躍する道を切り拓きました。その功績は、寡作ながらも高い評価を受ける建築作品群と、教育者・制度改革者としての社会的役割の両面にあります。

1930年にヒョリングで生まれたケアホルムは、当初はファッションデザインを志しましたが、やがて建築へと転じ、1956年に王立芸術アカデミー建築学校を卒業しました。学生時代に家具デザイナーのポール・ケアホルムと結婚し、以後はデンマークモダンデザインの中心に身を置きながら独自のキャリアを築きました。

1958年には自身の建築事務所を設立し、同時に母校で教育活動を開始しました。助手を置かず、設計から監理までを自ら手掛ける姿勢は「責任ある建築家」としての信念を体現しており、教育の場でもこの実践を重視しました。1989年には王立芸術アカデミー初の女性教授に就任し、女性建築家の地位向上に大きな影響を与えました。

代表作には自邸「ヴィラ・ケアホルム」(1962年)、ホルステブロー美術館(1976–81年)、レセ島のサマーハウス(1987年)などがあります。これらは、ミース・ファン・デル・ローエ的な合理主義、日本建築の空間概念、そしてデンマークの伝統的素材感覚を統合した独自の建築哲学を示しています。

また、ポール・ケアホルムとの協働や彼の遺産継承、展覧会デザインを通じて家具分野にも関与しました。とりわけ「Beton Elementer」や展覧会用の家具などは、建築家としての活動を補完する重要なデザインワークでした。彼女の遺産は、質の高い建築作品と制度的改革の両面において、今日もなお評価されています。


About

Year: 1930–2009
Place: Hjørring(ヒョリング)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン), Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Designer: Hanne Kjærholm(ハンネ・ケアホルム)


History

1930: ヒョリングに生まれる
1949–50: 女性のための絵画・工芸学校で学ぶ
1950: 王立芸術アカデミー建築学校に入学
1953: ポール・ケアホルムと結婚
1956: 王立芸術アカデミー建築学校を卒業
1958: 自身の建築事務所を設立、母校で教育活動を開始
1962: 代表作「ヴィラ・ケアホルム」を設計
1968: ニヴォーのマリーナ設計コンペで勝利
1976–81: ホルステブロー美術館を設計
1985: エッカースベルク・メダルを受賞
1988: マーゴット&トーヴァル・ドライヤー財団建築賞を受賞(女性初)
1989: 王立芸術アカデミー初の女性教授に就任
1993/2002: C.F.ハンセン・メダルを受賞
1998: 国立芸術基金より終身給付金を授与される
2004: 歴史的建築「レーヴェンボー」の修復に携わる
2007: レーヴェンボー修復でエウロパ・ノストラ賞を受賞
2009: コペンハーゲンにて死去


Furniture

・Beton Elementer
・Mahogany Storage Box
・Aluminium Podium Table
・Exhibition Display Furniture

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