CH38 Chair | チェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1963
Material: Oak, Teak
Size: 幅53 × 奥行47 × 高さ78 × 座面高43 cm


Story

CH38チェアは、1963年にハンス・J・ウェグナーがデザインし、カール・ハンセン&サン社によって製造されたダイニングチェアです。シェーカー様式のシンプルで装飾を排した美学を背景に持ちながら、ウェグナー独自の感性によって再解釈された作品であり、控えめながらも凛とした存在感を放っています。

この椅子は、前年に発表されたCH36チェアを発展させた位置づけにあります。CH36がペーパーコード座面を採用していたのに対し、CH38は木製の板座を採用し、よりしっかりとした安定感と異なる触覚的な体験を提供しました。この素材の違いは単なる仕様変更ではなく、ウェグナーが同じデザインを別の素材や構造で検証し、異なる結果を導き出す探究的な姿勢を示しています。

背もたれは深くカーブし、背中を優しく支えるように設計されています。座面の奥行きは浅めで、日本人の体型にも非常に相性が良いとされ、自然に良い姿勢を保つことができます。視覚的には、丸みを帯びた脚部や繊細にシェイプされた意匠が、全体に軽やかな印象を与えています。

CH38は、同時期の姉妹モデルであるCH36およびCH39と密接な関係を持っています。特にCH39はアームを加えた派生モデルであり、シリーズ全体が「統一性と多様性」を体現する存在となっています。これらの椅子群は、ウェグナーが単一の完成形に留まらず、常にデザインの可能性を広げていたことを雄弁に物語ります。

現在CH38はカール・ハンセン&サン社の現行コレクションには含まれていないものの、ヴィンテージ市場では高く評価されています。適切なメンテナンスを施された個体は半世紀以上を経ても健全な状態を保ち、その耐久性と普遍的なデザインが再評価されています。CH38は「実用と美の統合」というウェグナーの哲学を体現した椅子として、今なお静かな魅力を放ち続けています。

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