CH42 Chair | スタッキングアームチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1965
Material: Beech, Linen straps
Size: 幅60 × 奥行68 × 高さ76, 座面高42


Story

CH42チェアは、ハンス・J・ウェグナーが1960年代半ばにデザインした公共空間向けのスタッキングアームチェアです。彼の代表作であるCH24(Yチェア)が家庭用の工芸的名作であるのに対し、CH42は合理性と機能性を前面に押し出したプロダクトデザインとして構想されました。

素材にはブナ材(ビーチ)が用いられ、座面にはリネンのテープが採用されています。これはペーパーコードや革張りよりもコストを抑えつつ、十分な耐久性と快適性を確保するための選択でした。さらに「ナチュラル」「ステイン」「カラードラッカー」といった複数の仕上げバリエーションが存在し、商業施設や講堂などさまざまな場面で使用できる柔軟性を備えていました。

最大の特徴はスタッキング機能と連結機構にあります。座面フレームの側面には穴が設けられており、棒を通すことで横一列に並べた椅子を固定できるように設計されています。この特徴は、会議室や食堂など大規模な公共空間での使用を念頭に置いた実用主義的な設計思想を反映しています。

CH42はカール・ハンセン&サン社によって製造され、販売組織SALESCOを通じて広く流通しました。1967年のカタログにも掲載されており、この時期に実際に市場に出ていたことが確認されています。

今日ではヴィンテージ市場でのみ見られる稀少な存在となり、その独自の仕様や歴史的背景から、専門家や愛好家の間で再評価が進んでいます。CH42はウェグナーが「家庭用家具の巨匠」であると同時に「公共空間のデザイナー」としても高い能力を発揮したことを示す、知られざる名作といえるでしょう。

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