About
Designer: <a href=”https://denmark-design.com/hans-j-wegner/”>Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)</a>
Manufacturer: <a href=”https://denmark-design.com/andreas-tuck/”>Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)</a>
Year: 1960
Material: Teak, Oak
Size: W52 × D35 × H49 cm
Story
AT40 ネスティングテーブルは、1950年代から1960年代にかけてのデンマーク・モダン黄金期に誕生しました。当時、急速に都市化が進む北欧社会では、限られた住空間の中で快適に暮らすための家具が求められていました。ハンス・J・ウェグナーは、この要請に応える形で、日常生活の中で柔軟に活用できる家具を提案しました。その一つが、複数のテーブルを一つにまとめる入れ子式のAT40でした。
この作品の大きな特徴は、3台のテーブルが一体化する際の精緻な収まりです。一般的なネスティングテーブルが単にサイズ順に重ねられるのに対し、AT40は「次のテーブルにぴたりと収まる」ように設計されており、持ち運びや移動の際にも安定感があります。これはウェグナーが家具を使う人の体験を徹底的に想像し、小さな不便を解消する工夫を造形に統合した好例といえます。
素材の選択肢にも幅があり、チークとオークの組み合わせや総チーク材、総オーク材といったバリエーションが存在します。チーク材は深い色合いと豊かな木目によって落ち着きを与え、オーク材は軽快で明るい印象をもたらします。これにより、異なる家庭環境やインテリアに適応できる柔軟性を備えていました。脚部の繊細なテーパードや天板の面取りは、強度と美観を両立させる職人技の結晶です。
さらに、このデザインは空間構成の柔軟性を高める役割も担っていました。3台を並べて大きなテーブルとして使ったり、個別に配置して来客時の補助テーブルにするなど、状況に応じて多様な使い方が可能です。ウェグナーが掲げた「有機的機能主義(Organic Functionalism)」は、まさにこのような使い手中心の思想に基づいています。
現在では、この普遍的なデザインが再評価され、Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)によって「CH004」として復刻されています。復刻版はオリジナルに忠実でありながら、持続可能な素材や現代の製造技術を取り入れています。半世紀以上前に生まれたAT40が、今もなお暮らしに調和し続けている事実は、ウェグナーのデザインが単なる時代の産物ではなく、永続的な価値を持つことを証明しています。
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