About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1982
Material: Oak, Beech
Size: W90 × D90 × H72 cm(伸長時最大 W188 × D90 × H72 cm)
Story
CH002エクステンションテーブルは、1982年にデザインされたハンス・J・ウェグナー晩年の代表作です。椅子の巨匠として知られる彼の作品群の中で、テーブルは数こそ限られていますが、CH002はその生涯の哲学を結晶させた「静かなる傑作」として高く評価されています。都市化に伴う住空間の縮小という社会的背景を踏まえ、限られた空間でも柔軟に対応できる機能性と、美しさを両立させたテーブルです。
正方形のコンパクトな姿から、伸長板を用いることで最大6人まで対応できる楕円形へと変化します。この柔軟性は、単に機能的であるだけでなく、場の雰囲気そのものを変える力を持っています。丸みを帯びたエッジは安全性と柔らかさを兼ね備え、テーパー状の脚が軽やかな印象を与えつつ、幕板による堅牢な構造が安定性を保証しています。
素材選択においてもウェグナーらしい職人の知恵が反映されています。天板にはオークやビーチ材が用いられ、強度が求められるサポート部分には無塗装のアッシュ材を使用。最も負荷のかかる部分に適材を選ぶ姿勢は、彼がデザイナーである以前に家具職人であったことを物語ります。この「見えない部分へのこだわり」こそが、長寿命と信頼性を支える根本的要素となっています。
CH002はまた、ウェグナーの椅子との相性を前提に設計されています。CH24(Yチェア)やCH23など、同じく彼の代表的な椅子と自然に調和し、ダイニング空間全体に統一感を与えます。さらに、日常的な使用から来客時のもてなしまで幅広いシーンで活躍する柔軟性を備えており、日本の住空間においても高い親和性を発揮しています。
仕上げはソープ、オイル、ホワイトオイル、ラッカーなどから選ぶことができ、使い込むほどに経年変化を楽しむことができます。特にソープやオイル仕上げは、所有者に手入れの関与を促し、家具との関係を育む「儀式」として機能します。メンテナンスを通じて個人的な歴史が刻まれ、所有者に深い充足感を与える点も、このテーブルの価値の一部です。
CH002は、同年にデザインされたCH006の小型版として位置づけられます。より広い空間向けのCH006に対し、CH002は都市型住居を想定した緻密なスケール感を持ち、デンマークデザインの哲学を現代生活に適応させた具体的な回答となっています。時代を超えた普遍性を持ち、持続可能性を重視するカール・ハンセン&サンの理念とも響き合う作品です。