Story
エドヴァルド・ヴァイエ（1879–1943）は、デンマーク・モダニズムの先駆者として位置づけられる画家であり、豊かな色彩表現と詩的な構成によって知られています。彼はしばしばノルウェーの画家ムンクと混同されることがありますが、その生涯と作品はまったく異なる独自の軌跡を歩みました。
貧困の中で育ち、早朝の新聞配達や塗装業を経て画家を志した彼は、王立美術アカデミーへの入学を拒まれながらも強い意思を貫き、クリスチャン・ザールトマンの自由な教育を受けました。この経験は、彼を自然主義から解放し、モダニズムへの転換へと導く重要な契機となりました。
ヴァイエはクリスチャンスー島やボルンホルム派の画家たちと交流し、セザンヌやフランス印象派から大きな影響を受けました。しかし同時に、芸術運動やグループに完全に属することを拒み、孤高の知性を保ち続けました。彼の作品は都市風景や神話を主題にしつつも、常に色彩理論と精神的な表現を探究しています。
晩年には創作の多くを控え、著作『Poesi og Kultur（詩と文化）』の執筆に注力しました。死後出版されたこの書は、彼の芸術観を体系的に伝える重要な遺産となっています。彼は「デンマークにおける最も重要な色彩家の一人」と評され、その影響は後世の芸術家たちに確実に受け継がれています。
About
Year: 1879–1943
Place: Copenhagen（コペンハーゲン）
History
1879: コペンハーゲンに生まれる。幼少期に父が家を去り、貧困の中で成長する。
1905: 王立美術アカデミー受験に失敗し、「自由研究校」でクリスチャン・ザールトマンに師事する。
1911: クリスチャンスー島で制作活動を開始し、以後毎年滞在して風景画を描く。
1915: 『クリスチャンスー島の日の出』を制作、色彩探求の重要な出発点となる。
1917: 神話的主題『ポセイドン』を描く。
1921: 代表作『ネレイデスとトリトン』を完成させ、デンマーク・モダニズムの傑作とされる。
1922: 友人カール・イサクソンの死を契機に、色彩理論の深化を進める。
1923: 『マルスとヴィーナス』を制作。
1924: 都市風景『ランゲリニの眺め』を描き、複数の色彩習作を残す。
1932: 『森林の道』を制作。
1940: 後期の代表作『ファウヌスとニンフ』に取り組む。
1943: コペンハーゲンにて死去。
1951: 遺著『Poesi og Kultur（詩と文化）』が未亡人により出版される。
その後、作品は国立美術館（SMK）やデイヴィッド・コレクションなどに収蔵され、デンマーク近代美術の殿堂に位置づけられる。
Works
・View over Wilder’s Square, Christianshavn | ワイルダー広場の眺め 1906
・Interior with Artist’s Sister, Emma Weie | 芸術家の姉妹エマ・ヴァイエのいる室内 1910
・Utsikt over Højbroplads | ホイブロー広場の眺め 1911
・Sunrise, Christiansø | クリスチャンスー島の日の出 1915
・Poseidon farer over havet omgivet af nereider og tritoner | ポセイドンとネレイデス、トリトン 1917
・Nereider og Tritoner | ネレイデスとトリトン 1921
・Mars og Venus | マルスとヴィーナス 1923
・View of Langelinie | ランゲリニの眺め 1924
・Forest Track | 森林の道 1932
・Faun and Nymph | ファウヌスとニンフ 1940–41
・Dante og Vergil i Underverdenen | ダンテとヴィルギリウスの冥界下り 年不詳
・Color Studies for Langelinie | ランゲリニの眺めの習作 1924頃
・Portraits of Copenhagen Citizens | コペンハーゲン市民の肖像群 年不詳
・Harbor Views of Copenhagen | コペンハーゲン港の眺め 年不詳
・Mythological Studies | 神話主題の習作群 1920年代
・Compositional Collages | 構成的コラージュ作品群 1930年代
・Self-Portrait Series | 自画像シリーズ 年不詳
・Religious Motifs | 宗教的モチーフの作品群 年不詳
・Sketches of Tritons and Nereids | ネレイデスとトリトンの習作群 1920年代
・Unfinished Works | 未完成作品群 年不詳