FJ49 Judas Table | ジュダス・テーブル


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Niels Vodder(ニールス・ヴォッダー) / Niels Roth Andersen(ニールス・ロス・アナセン) / House of Finn Juhl(ハウス・オブ・フィンユール)
Year: 1945
Material: Walnut, Oak, Fabric
Size: W136 × D86 × H78 cm / W216 × D86 × H78 cm(SH41 cm)


Story

フィン・ユールは、同時代のハンス・J・ウェグナーやボーエ・モーエンセンとは異なり、家具職人としての修業を受けずに建築家として出発した異色の存在でした。そのため彼の家具は、実用的構造からではなく、彫刻的な発想から生み出されています。ジュダス・テーブルは、その代表的な結晶です。

天板は楕円形で、テーパー状の脚と彫刻的なベースの上に軽やかに浮かんで見える構造を持ちます。これはユールが追求した「運ぶものと運ばれるもの」というテーマを体現しており、彫刻作品のような有機的な造形を家具に与えています。さらにブラジリアン・ローズウッドの美しいブックマッチ貼りが施され、卓越した職人ニールス・ヴォッダーの技術が存分に発揮されています。

このテーブルを特別な存在にしているのが、天板に埋め込まれた30個のスターリングシルバーの象嵌です。これはキリストを裏切ったユダが受け取った「30枚の銀貨」を暗示しており、作品に象徴的な意味を付与しています。同時に外側の象嵌は座席位置のガイドとして機能し、芸術性と実用性が見事に融合しています。

ジュダス・テーブルは1948年頃にデザインされましたが、商業的に難解であったため1959年にようやくニールス・ヴォッダーのカタログに掲載されました。その希少性と複雑な構造のため生産数は極めて限られ、今日ではデンマークモダン家具の中でも最も希少かつ高価なダイニングテーブルのひとつとされています。

現在では、Niels Roth AndersenやHouse of Finn Juhlによって復刻が行われていますが、オリジナルのヴォッダー工房製作のヴィンテージ品は、市場で圧倒的な価値を持ち続けています。歴史的真正性、素材の希少性、象徴性を兼ね備えたこのテーブルは、芸術と職人技が融合したユールの哲学の頂点を示す作品として、20世紀デザインの遺産に数えられています。

 

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