About
Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Bovirke(ボビルケ)
Year: 1953
Material: Oak, Teak (Plywood)
Size: W53 × D51 × H74(SH45)
Story
BO62チェアは、フィン・ユールが1953年に手がけた椅子で、別名「リーディングチェア」としても知られています。オーク材のフレームと積層チーク材の座面・背もたれを組み合わせたデザインは、軽快さと視覚的な浮遊感を特徴としています。
初期の作品が熟練職人による一点制作であったのに対し、この椅子はボビルケとの協働により、工業的な生産手法を取り入れたことが大きな特徴です。芸術性と量産性を両立させる試みは、彼のキャリアにおける大きな転換点を示しています。
座面と背もたれは積層技術によって成形され、有機的な曲線を描いています。これはフィン・ユールの抽象彫刻からの影響を示すと同時に、量産化への対応でもありました。芸術性が高すぎると批判されることもあった彼の作品が、実用的で快適な家具として成立していることを証明するものです。
また、この椅子の造形は「運ぶもの」と「運ばれるもの」を分離するというフィン・ユールのデザイン哲学を反映しています。フレームから独立して見える座面と背もたれは、視覚的な軽やかさと浮遊感を強調し、彼の代表的なデザイン言語を体現しています。
BO62は、彼が工芸的な一点制作から工業的なエレガンスへと歩みを進めた過渡期を象徴する作品です。その存在は、デンマーク・モダンデザインが国際的に評価される上で大きな役割を果たしました。