Half Round Table | 半円形テーブル


About

Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1978
Material: Steel, Beech, Cork
Size: W × D × H


Story

この半円形テーブルは、ポール・ケアホルムが1978年に建築家ニルス・ファガーホルトの依頼を受けて特別に制作した一点物です。ケアホルムのキャリア後期にあたる時期の作品であり、彼のデザイン哲学と素材への探究心が結実した重要な例といえます。

ケアホルムは「家具の建築家」として知られ、木工中心のデンマーク伝統に対して、スチールという工業素材を家具に取り入れた革新者でした。このテーブルでも、古艶を帯びたスチールフレームが基調となり、そこにブナ材とコルク象嵌の天板が組み合わされています。素材同士が対話するような構成は、彼が一貫して追い求めた「工業素材と自然素材の融合」を端的に示しています。

半円形という珍しい形状は、壁際や特定の空間に合わせて設計されたことを示唆しています。量産モデルのPKシリーズとは異なり、明確な用途と空間を意識した特注品であり、ケアホルムが「空間の一部として家具を構築する」という建築的アプローチを徹底していたことがうかがえます。

製作にはPPモブラーが関与しており、特に木工部分である天板を担ったと考えられています。一方で、スチールフレームの製作者は不明であり、複数の工房や職人が協力した結果生み出された作品である可能性が高いとされています。ケアホルムがしばしばプロトタイプや一点物を「デザイン・ラボラトリー」として位置づけていたことを踏まえると、この作品もまさにその実験的精神の表れといえるでしょう。

このテーブルは2015年にブルーン・ラスムッセンのオークションに出品され、公的に記録が残されたことで来歴が明確になっています。量産家具とは異なり、個人的な依頼と友情から生まれた一点物である点で、デンマーク・モダンデザイン史において特別な地位を占めています。

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