About
Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィッツ & オルラ・モールゴー=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1950s
Material: Teak, Rattan, Metal fittings
Size: W 60 × D 50 × H 48 cm
Story
FD551/50 Occasional Tableは、デンマークを代表するデザイナーデュオ、ピーター・ヴィッツとオルラ・モールゴー=ニールセンによって設計され、France & Daverkosen(後のFrance & Søn)から製造・輸出された小型のテーブルです。このモデルは、サイドテーブルや補助的なコーヒーテーブルとして設計され、家庭から待合室、オフィスまで幅広い空間で活用されました。
特徴的なのは、分解と再組立を可能にするノックダウン構造です。輸送体積を抑え、効率的に国際市場へ供給するための仕組みであり、デザインと工学が融合した象徴的な例といえます。脚部と天板フレームの接合には高精度の金属フィッティングが用いられ、木材の収縮や膨張といった自然素材の変化にも対応できる調整機能が備わっていました。これにより、長期使用でも揺れや歪みが生じにくい耐久性を確保しています。
素材には、当時のデンマーク家具輸出で主流となったチーク材が選ばれました。チークは強度や耐湿性、防虫性に優れ、国際輸送において品質を安定させるための理想的な木材でした。また、棚板には籐(ラタン)が用いられ、軽量性と通気性をもたらし、チーク材との視覚的なコントラストを生み出しました。籐の加工には伝統的なケーンワーク技術が使われ、職人の精緻な作業によって美しく固定されています。
歴史的背景として、France & Daverkosenは1950年代半ばにはデンマーク家具輸出の約60%を占めるほどの巨大メーカーへと成長していました。その成功を支えたのがHvidt & Mølgaardのデザインでした。FD551/50は、同社の輸出戦略を体現した代表的な作品であり、シンプルで軽量、かつ分解可能という合理性は、デンマークモダンの国際的評価を確立する大きな要因となりました。
今日においてもFD551/50は、ヴィンテージ家具市場やデザイン史の文脈で高く評価され続けています。その普遍的なデザインと優れた機能性は、芸術性と工業的合理性の調和を体現したデンマークモダンの遺産として、今なお強い存在感を放っています。