About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1951
Material: Nutwood, Leather
Size: W66 × D57 × H82 × SH42 cm
Story
JH508アームチェアは、1951年にハンス・J・ウェグナーがデザインし、コペンハーゲンの名門工房ヨハネス・ハンセンによって製造された高級モデルです。1949年に発表されたJH501「ザ・チェア」の流れを汲みつつ、その構造的純粋さをさらに発展させ、最高の快適性と豪華な張り地技術を融合した作品として位置づけられます。
この椅子の特徴は、クルミ材(Nutwood)の堅牢なフレームと黒革の張り地の組み合わせにあります。チーク材やオーク材が主流であった時代に、より加工難度の高いクルミ材を選択したことは、最高級家具としての位置づけを明確に示しています。深い色調と豊かな木目を持つクルミ材は、黒革と相まって重厚でフォーマルな印象を醸し出します。
寸法は幅66cm、奥行57cm、高さ82cm、座面高42cmと、当時の標準的なダイニングチェアに比べてゆとりを持たせたプロポーションです。特に座面高が低く設定されていることにより、着座者は自然にリラックスした姿勢を取ることができ、ラウンジチェアとしての要素を強く備えています。
製造を担ったヨハネス・ハンセン工房は、伝統的なキャビネットメーカーとして、見えない接合部にも高度な木工技術を施し、張り職人による精緻な革張りと一体化することで、彫刻的でありながら高い耐久性を備えた仕上がりを実現しました。フレームは構造的に堅牢であり、同時に張り地を美しく支える役割を果たしています。
JH508は、JH501「ザ・チェア」が会議室やダイニングの象徴であったのに対し、フォーマルなリビングやエグゼクティブオフィスにふさわしい豪華な存在感を持ち、ウェグナーのデザインが持つ「構造の純粋さ」と「快適性の追求」という二つの方向性を補完する位置に立っています。その限定的な製造体制からもわかるように、JH508は当時から高いステータスを持つ作品であり、現在でも極めて希少なヴィンテージピースとして評価されています。