About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1949
Material: Oak, Teak, Wool
Size: W145 × D84 × H77 × SH40 cm
Story
JH555セッティーは、1949年のデンマーク家具職人ギルド展で発表された作品であり、ハンス・J・ウェグナーの「ブレイクスルーの年」を象徴する代表作の一つです。この年、彼はラウンドチェア JH501や折りたたみ椅子 JH512などとともに、家具史を変える革新的なデザインを世に送り出しました。その中でJH555は、従来の重厚で布張りのソファに代わる新しい座家具の在り方を提示し、構造そのものを美としたデザインの転換点を示しています。
最大の特徴はアームレス構造にあります。幅145cmほどのシンプルなシルエットに、深い座面と低い座高を組み合わせ、ソファとしての快適性を確保しながら視覚的な軽さを際立たせています。これにより、従来のソファの「かさばり」を排し、空間を開放的に見せる効果を持ちました。奥行きが深いため、ラウンジ用としてはもちろん、デイベッド的な使い方も想定されており、後の多機能家具の原型と位置づけられます。
フレームには主にオーク材が用いられましたが、チーク材による稀少なバージョンも存在します。無垢材を細く削り出し、角度付きクロスストレッチャーで補強することで、軽快さと堅牢性を両立させています。接合には伝統的なほぞ継ぎが駆使され、継ぎ目を最小限に抑えた緻密な職人技がフレームの美観を際立たせています。張地にはクラシックなストライプ柄のウールが使われ、フレームの軽快な印象を損なうことなく快適性を高めました。
製造を担ったヨハネス・ハンセン工房は、数名の熟練職人による小規模体制であり、量産を目的とせず、最高品質の家具を限定的に製作しました。そのためJH555は当初から稀少性が高く、現存数も限られています。再生産は行われておらず、今日ではヴィンテージ市場でのみ流通し、その希少性と歴史的意義ゆえに高く評価されています。
JH555セッティーは、単なる二人掛けソファではなく、ウェグナーが掲げた「重厚な布張りソファからの脱却」という設計思想を体現する革新的な作品です。構造を隠さず、木材とフレームそのものを美として提示する姿勢は、デンマークモダニズムの核心を示し、今もなお普遍的な魅力を放ち続けています。