About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1949 / 1952
Material: Teak, Oak, Formica / Linoleum
Size: W120 × D60 × H50 cm
Story
JH575コーヒーテーブルは、ハンス・J・ウェグナーとヨハネス・ハンセン工房の緊密な協業によって誕生した稀少な作品です。その最大の特徴は、リバーシブル仕様の天板にあります。片面はチーク材が用いられ、深い木目と経年変化による温かみを楽しめるよう設計されました。もう一方の面にはリノリウムまたはフォーマイカが採用され、耐久性・耐水性に優れた実用的な仕上げとなっています。用途や場面に応じて使い分けることができるこの二面性は、ウェグナーの徹底した機能主義と生活への配慮を象徴しています。
天板の反転機構は、異素材の組み合わせを長期的に安定させる高度な技術を必要とし、ヨハネス・ハンセン工房の職人技術なくしては実現不可能でした。脚部には主にオーク無垢材が用いられ、強度と安定性を確保しながら、チークとのコントラストが視覚的な軽快さを生み出しています。後期の製造では脚部にチークが使用された例もあり、仕様の変化は国際市場への対応や素材調達の事情を反映していると考えられます。
JH575がデザインされたのは1949年頃とされ、一部資料では1952年の発売が確認されています。このタイムラインは、同時期に設計されたJH503「ザ・チェア」と並び、ウェグナーとヨハネス・ハンセン工房の信頼関係が深化し、実験的かつ高級志向の家具が市場へ送り出されたことを示しています。
このテーブルの生産数は極めて限られており、市場に出回ることはほとんどありません。量産家具ではなく、むしろ美術工芸品としての性格が強く、当時の富裕層や知識層をターゲットにした希少な作品でした。背面に施された「JH刻印」は、ハンセン工房による正式な製造を示す品質保証であり、デンマーク・モダニズムの技術的遺産としての地位を確立しています。
JH575コーヒーテーブルは、日常生活の実用性と美的価値を高度に両立させ、デンマーク・モダンデザインの黄金期を象徴する作品です。ウェグナーの機能主義と職人の卓越した技術が結実したこのテーブルは、現代においても再評価され続けるべき傑作です。