About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1958
Material: Teak, Oak, Metal
Size: W210 × D90 × H72 cm
Story
JH584 ワークテーブルは、ハンス・J・ウェグナーが1958年にデザインし、ヨハネス・ハンセン工房によって製造された大型の作業用テーブルです。デンマーク・モダンの黄金期を象徴する本作は、ウェグナーの成熟したデザイン哲学と、ハンセン工房の精緻な職人技術が見事に統合された記念碑的な作品といえます。
このテーブルの構成は、チーク材の広大な天板、オーク材の脚部、そして金属製のブラケットによって成り立っています。素材ごとの特性を最大限に引き出し、視覚的な軽快さと構造的な安定感を両立させており、ウェグナーが追求した「素材への誠実さ」が明確に表現されています。特に金属製ブラケットは隠されることなく見せられており、機能的要素を洗練された意匠へと昇華するウェグナーらしいアプローチが示されています。
幅210cmを超える堂々たるサイズを持ちながら、各部材の明快な分節化によって、全体は軽やかで調和の取れた佇まいを見せます。この合理的で透明性の高い構造は、建築家やデザイナーの作業空間、会議室など、プロフェッショナルな場での使用を想定して設計されたことを物語っています。
デザイン年とされる1958年は、デンマーク家具が国際市場、特にアメリカで高い評価を受けていた時期と重なります。JH584はその潮流の中で、ギルド展や輸出市場を通じて紹介され、デザインとクラフトマンシップの結晶として注目を集めました。引き出しなどを排した純粋な天板の構成は、作業机としての本質的な役割を際立たせると同時に、ウェグナーの「絶え間ない純化のプロセス」を体現しています。
ヨハネス・ハンセン工房の卓越した技術により、JH584は単なる実用品を超えて芸術性を備えた存在へと昇華しました。後年、その製造がPPモブラーへと継承される流れの中でも、JH584はウェグナーとハンセンの協働関係が生んだ名作の一つとして、今日に至るまで高く評価されています。