Story
GETAMA(ゲタマ)は、デンマーク家具史においてきわめて特異な存在です。そのルーツは1899年、カール・ペダーセンがユトランド半島の小さな町ゲステッドで創業した「Gedsted Tang- og Madratsfabrik(ゲステッド海藻・マットレス工房)」にあります。地元のリムフィヨルドで採れる海藻を活用したマットレスは、当時としては画期的で、耐久性と快適性を兼ね備えた製品として瞬く間にデンマーク全土で知られるようになりました。この海藻マットレスの革新性こそが、後のゲタマの哲学──自然素材を最大限に活かす姿勢──の基盤となったのです。
1910年に家具製造へと領域を広げたゲタマは、長く寝具メーカーとしての側面を持ちながら、徐々に家具工房としての存在感を強めました。1953年、社名を「GETAMA」と改めたことは、家具メーカーとして国際的な舞台に立つ意思表明でもありました。その転換点において出会ったのが、ハンス・J・ウェグナーです。
ウェグナーにとってゲタマは、ヨハネス・ハンセンのような高級工房とは異なり、より多くの人々に良質な家具を届けるための理想的なパートナーでした。ウェグナーが手掛けた120点以上の作品は、GE290シリーズを筆頭に、イージーチェア、ソファ、ダイニングチェア、寝具と幅広く、デンマークの公共施設や家庭に広く浸透しました。ウェグナーはしばしばゲステッドの工房に滞在し、職人たちと共に試作を繰り返し、デザインを細部まで調整したと伝えられています。この緊密な協働関係こそが、ゲタマを「知られざる巨人」たらしめた最大の理由です。
1990年代、経営難を乗り越えてTemcoグループ傘下に入り、ゲタマは新たな局面を迎えます。ナナ・ディッツェルをはじめとする現代デザイナーとの協業を進め、公共施設や大使館向けの特注家具を手掛けるなど、ポスト・ウェグナー時代にふさわしい活動を展開しました。
しかし2024年2月、ゲステッドの木工工房が火災で全焼するという大きな危機に直面しました。ブランドの存続が危ぶまれる中、2025年にはカール・ハンセン&サンがゲタマのデザインポートフォリオを継承し、GE290をはじめとする名作の継続生産が決定しました。物理的な工房を失っても、GETAMAの精神である「高貴なクラフツマンシップ」は未来へと受け継がれています。
About
Year:1899-2024
President:Carl Pedersen(カール・ペデルセン)ーFrank Pedersen(フランク・ペデルセン)/ Aage Pedersen(アーゲ・ペデルセン)ーWilly Pedersen (ウィリー・ペデルセン)/ Carl Pedersen(カール・ペデルセン)ーCarl Pedersen(カール・ペデルセン)ーMogens Christensen(モーエンス・クリステンセン)ーJørgen Højbjerg(ヨルゲン・ホイビェアグ)ーJohn Temp(ジョン・テンプ)
Designer:Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)、Nanna Ditzel(ナナ・ディッツェル)、Friis & Moltke(フリース&モルトケ)
Place:Gedsted(ゲステッド)
History
1899
カール・ペダーセンにより北ユトランド半島のゲステッドにGedsted Tang og Madrasfabrik(ゲスステッドの海藻とマットレス工場)として創業する。
1905
長男のフランク・ペデルセンが経営に加わる。フランク・ペデルセンはマットレス部門を担当する。
1918
次男のアーゲ・ペデルセンが経営に加わる。アーゲ・ペデルセンは家具部門を担当する。
1925
カール・ペデルセンが死去する。息子のフランク・ペデルセンとアーゲ・ペデルセンにより経営が続けられる。
1937
海藻のマットレスが商品ラインナップからなくなり、新しい発明品であるスプリングマットレスが導入される。この時点では社名にはなっていないが「GETAMAスプリングマットレス」という商品名としてGETAMAの名前が使われるようになる。
1942
家具工場が火災が発生する。完成した家具数百点と製造途中の家具も同じくらい燃え、機械がすべて失われる。
1949
50周年を迎える。ハンス・J・ウェグナーとの協力関係が始まる。これによりアーゲ・ペデルセンがデザインした家具(イージーチェア.No88)の生産がされなくなる。
1950
Easy Chair.GE-260、Easy Chair.GE-260A、Easy Chair.270、Sofa.GE-270/3、Easy Chair.GE-330、Easy Chair.GE-330A、Sofa.GE-330/2A & 3A、Stool.GE-330S、Daybed.GE-6、Daybed.GE-7、Daybed.GE-77、Daybed.GE-19、Sofa Set. GE-20、Flag HalyardChair.GE-225を発表する。
1951
Carl Hansen & Son(カール・ハンセン&サン)、Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)、RY mobler(ロユ・モブラー)、AP Stolen(アンカー・ペーターセン)とともにもウェグナーのデザインする量産家具の生産に着手し、Salesco(サレスコ)として共同の営業活動が始まる。それぞれのメーカーはサイドボードやソファなど得意分野が分かれていたがGETAMAはスプリングの技術を活かしたイージーチェアやソファを担当した。
マットレス工場で火災が発生する。
1953
国際的に通用するために社名をGETAMAに変更する。
Sofa.GE-290/2&GE-290/3、Easy Chair.GE-290、Easy Chair.GE-290A、Stool.GE-290を発表する。
1955
1961
家具工場を増設する。
1960年代初頭
フランク・ペデルセンの息子カール・ペデルセン、アーゲ・ペデルセンの息子ウィリー・ペデルセンに経営が引き継がれる。
1965
Double bed.GE-701、Bed.GE-705を発表する。
1967
Easy Chair.GE-151、Easy Chair.GE-460、Rocking Chair. GE-673を発表する。
1965
Double bed.GE-701、Bed.GE-705を発表する。
1968
Coffee Table.GE-20、Coffee Table.GE-57、Coffee Table.GE-58・Desk.GE-125、Book case.GE-310/1&GE-310/2&GE-310/3を発表する。
1969
サレスコから脱退する。サレスコの社長であったヨルゲン・ホイヤーを引き抜き、自社のショールームをコペンハーゲンのスボーに開設する。ウェグナーは当初サレスコを脱退したGETAMAを非難したが、新しく就任したサレスコのフォスと意見が合わず結局GETAMA側につく。サレスコにはデザインの提供がされることがなかったが、GETAMAにはデザインの提供を続けた。GETAMAとしてはもともと輸出とストアベルト海峡東側の営業を託していただけで、サレスコのシェアは大きくなく、ユトランド半島の自社で営業をしていたため大きな影響はなかった。
Sofa.GE-370、Sofa.GE-375を発表する。
1970
Chair.GE-420、Chair.GE-421、 Sofa.GE-40/2&GE-40/3、Easy Chair.GE-40、Easy Chair.GE-530、Easy Chair.GE-530A、Sofa.GE-530/2&530/3、Table. GE-601、Try Table. GE-453を発表する。
1972
Sofa.GE-50/2 Sofa.GE-50/3、Easy Chair.GE-50、Sofa.GE-55/2 Sofa.GE-55/3、Easy Chair.GE-55を発表する。
1973
Chair.GE-30を発表する。
1975
Chair.GE-211、Chair.GE-212、Chair.GE-213、Chair.GE-214、Chair.GE-72、Easy Chair.GE-215、Easy Chair.GE-215A、Easy Chair.GE-220、Easy Chair.GE-220A、Easy Chair.GE-73、Bedside Table.GE-905、Sofa.GE-220/2・Sofa.GE-220/3、Bed.GE-900を発表する。
1976
Table.GE-208、Stackable chair.-GE-209、Stackable chair.GE-210を発表する。
1978
Sofa.GE-265/2、Sofa.GE-265/3、Easy chair.GE-265、Easy chair.GE-265A、Stool.GE-265Sを発表する。
1980
Coffee Table.GE-81、Coffee Table.GE-83、Stool.GE-280S、Coffee Table.GE-80.82.85.86、Sofa.GE-280H、Arm Chair. GE-201を発表する。
1984
Easy Chair.GE-284A、Easy Chair.GE-284、Stool.GE-284Sを発表する。
1985
AdditionsTable.GE-100.101.102.103、ShakerTable.GE-104、Sofa.GE-284/2、Sofa.GE-284/3、Sofa.GE-285/3、Sofa.GE-285/2を発表する。
1986
モーエンス・クリステンセンに経営が引き継がれる。生産設備の近代化、新モデルの開発、マーケティングの強化が行われる。
Table.GE-126、StolChair.GE-155、Arm Chair.GE-156を発表する。
1991
ヨルゲン・ホイビェアグに経営が引き継がれる。
1994
デンマークのTEMCOに買収される。TEMCOの代表であるジョン・テンプに経営が引き継がれる。新会社GETAMA DANMARKと社名を変更する。大規模な投資により黒字化に成功する。
1999
100周年を迎える。センチュリー2000シリーズをデザインする。
2020年代初頭
国際的にヴィンテージ家具としての評価が高まる
2025
カール・ハンセン&サンが家具部門の大部分を継承、ゲタマはマットレス事業に注力
Furniture
・GE240 Cigar Chair | シガーチェア
・GE236 Sofa
・GE236 3-Seater Sofa
・GE290 Armchair | プランクチェア
・GE290 2-Seater Sofa
・GE290 3-Seater Sofa
・GE290 High Back
・GE290A Footstool
・GE375 Armchair
・GE375 3-Seater Sofa
・GE375 High Back
・GE700 Modular System
・GE673 Easy Chair
・GE672 Stacking Chair
・GE258 Daybed
・GE259 Daybed
・Joy Bench
・Mondial Seating
・Vita Sofa
Imprint/Label









参考文献:GETAMA 100th anniversary