Sofa Series 3300 | ソファ


About

Designer: Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1956
Material: Chrome-plated steel, Wood, Cold-cure foam, Fabric/Leather
Size: W 76 × D 78 × H 72 × SH 40 cm(3300 ラウンジチェア基準)


Story

アルネ・ヤコブセンが1956年にデザインしたSeries 3300は、建築的合理主義と構造的純粋さを体現した作品です。曲線的な造形で知られるエッグチェアやスワンチェアと対照的に、このシリーズは直線と鋭角で構成され、建築家としてのヤコブセンの理念を鮮明に示しています。その姿は、彼が手掛けた建築作品との直接的な視覚的連携を持つ、まさに「小さな建築物」と呼ぶにふさわしい椅子です。

このシリーズは、SASロイヤルホテル(現ラディソン・コレクション・ロイヤルホテル)のために構想されました。ホテル全体を一つの総合芸術として設計する中で、ヤコブセンは家具に空間ごとの役割を与えています。公共性と秩序を象徴するエアターミナルには直線的でフォーマルなSeries 3300を、ロビーや客室には彫刻的で親密なエッグチェアやスワンチェアを配置しました。この意図的な対比は、空間体験そのものを演出するための手法であり、椅子が単なる道具を超えた存在であることを示しています。

構造面では、クロムメッキのスチールフレームと、コールドキュアフォームによる成形クッションが特徴です。座部とフレームが明確に分離した構造は、座面が宙に浮いているかのような軽快さを生み出しています。特に冷間硬化フォームの採用は、直線的で鋭いエッジを長期間維持するために不可欠であり、技術と美学が密接に結びついた革新的な決定でした。

製造を担ったフリッツ・ハンセン社は、成形合板や発泡素材の技術開発を背景にヤコブセンとの協働を深め、このシリーズを実現しました。ラウンジチェア(3300)、2人掛け(3302)、3人掛け(3303)などモジュール化された展開も、当時として革新的なシステム思考の表れでした。

Series 3300はその後、オックスフォード大学セント・キャサリンズ・カレッジやデンマーク国立銀行などのプロジェクトでも採用され、公的空間から個人住宅にまで広く活用されました。直線的で建築的な造形は、今日に至るまで普遍的なモダニズムの象徴として受け継がれています。

 

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