About
Designer: Børge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)
Manufacturer: Søborg Møbler(ソボー・モブラー)
Year: 1950年代
Material: Teak, Oak, Beech
Size: W100 × D47.5 × H87 cm
Story
ボーエ・モーエンセンがデザインし、<a href=”https://denmark-design.com/soborg-mobler/”>Søborg Møbler(ソボー・モブラー)</a>が製造した4段チェストは、デンマーク機能主義の美学と職人技の融合を象徴する作品です。装飾を排した簡潔なフォルムと素材の誠実な扱いにより、日常の道具としての家具の理想形を追求しています。
本体はチーク突板を主体とし、脚部や取っ手にはオーク無垢材が用いられました。脚は角から内側に寄せて配置され、キャビネット全体を軽やかに見せています。中には、脚先にチーク材の“ソックス”が施されたモデルもあり、素材のコントラストが空間に温かみを添えています。引き出しの前板と一体化した無垢の取っ手は、握りやすく人間工学的にも優れた形状を持ち、触れる喜びをもたらします。
構造面では、精密な留め継ぎや蟻組みなどの高い木工技術が随所に見られます。引き出しを満たしても安定を保つ堅牢な脚構造は、Søborg Møblerが誇るキャビネット製作の伝統を反映しています。モーエンセンは、このような構造的信頼性を基盤としながら、都市生活者のための「合理的で長く使える家具」を提案しました。
戦後デンマークでは、狭い住居に適した実用的な家具が求められました。モーエンセンはその課題に正面から向き合い、家庭の中で快適に機能するデザインを追求します。このチェストのような収納家具は、日常生活の質を高めるための具体的な解答であり、彼の民主的デザイン哲学の核心をなすものでした。
モーエンセンの師であるコーア・クリントの影響のもと、人体寸法に基づく合理的設計を実践し、引き出しの深さや収納寸法まで精緻に設計されています。その結果生まれた形態は、単に美しく整っているだけでなく、使用者の動作や空間の制約に自然に寄り添うものでした。
Søborg Møbelfabrikは1890年創業の老舗工房であり、モーエンセンをはじめピーター・ヴィッツ&オーラ・モルゴー=ニールセン、モーエンス・ラッセンら著名デザイナーの作品を数多く製造しました。彼らは毎年のキャビネットメーカーズ・ギルド展を通して、デンマーク・モダンデザインの発展を牽引し、質の高い工芸家具を通じてその理念を世界に広めました。
このチェストは、ボーエ・モーエンセンの機能主義とSøborg Møblerの職人精神が出会った結晶であり、デンマーク・モダンの核心を示す家具です。形態と機能の調和、素材の対話、そして時代を超える普遍的な美しさによって、現代の空間にも静かな存在感を放ち続けています。