Model232 Dresser | ドレッサー


About

Designer: Børge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)
Manufacturer: Søborg Møbler(ソボー・モブラー)
Year: 1950s
Material: Teak, Oak
Size: W150 × D45 × H87 cm


Story

ボーエ・モーエンセンがデザインし、ソボーグ・モブラーによって製造された8段引き出しのロータイプドレッサーは、デンマーク機能主義の理念を最も純粋な形で体現した収納家具です。構造、素材、比例関係のすべてが、実用性と静かな美を両立するために設計されています。

モーエンセンは師であるコーア・クリントの思想を継承し、家具を「人々に奉仕する道具」として再定義しました。このドレッサーも、空間の主役としてではなく、生活の基盤を静かに支える存在として構想されています。装飾を排した矩形の構成と、彫刻的な取手は、機能的でありながら彫刻的な美しさを備え、使用者の日常に調和するよう設計されています。

ロータイプという特性は、化粧台やサイドボード、テレビ台など多様な用途に適応できる柔軟性を持っています。幅150cm・高さ87cmという寸法は、人間工学的観点からも優れたアクセス性を確保しており、かがむことなく引き出しを操作できる点に特徴があります。これは、モーエンセンが長年追求した「人間中心の機能主義」を具現化する代表例です。

構造的には、引き出し箱に用いられた蟻継ぎ(dovetail joint)や、木製ランナーによる滑らかな可動性など、ソボーグ・モブラーの高い製造技術が遺憾なく発揮されています。外装にはチーク材、内部にはオーク材が用いられ、視覚的温もりと構造的堅牢性の両立を達成しています。これらの素材選定は、当時のデンマーク家具が持つ「素材の正直さ」という倫理観を反映したものでした。

1950年代、ソボーグ・モブラーはデンマーク家具職人ギルド展を通じて国際的な評価を高めており、このドレッサーもその品質基準を象徴する作品のひとつでした。重厚なチーク材の存在感を、軽やかにテーパーした脚部で支える構成は、視覚的にも機能的にも完璧な均衡を保っています。今日においても、このロー・ドレッサーはモーエンセンの思想を伝える実践的なアーカイブとして評価され続けています。

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