Model 310 Desk | デスク


About

Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィット&オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: Søborg Møbler(ソボー・モブラー)
Year: 1954
Material: Teak
Size: W 170 × D 80 × H 73 cm


Story

1950年代半ばにデザインされたModel 310デスクは、ピーター・ヴィットとオルラ・モルガード=ニールセンが手掛けた作品の中でも、最も建築的思考が色濃く反映された一点です。彼らは家具を単なる機能物としてではなく、空間を構成する「構造体」として捉え、その理念をこのデスクに具現化しました。

この作品を製造したのは、デンマークの老舗家具工房ソボー・モブラーです。1890年にヤコブ・E・ヤコブセンによって設立されたこの工房は、伝統的な指物技術と工業的合理性の融合を掲げ、モーエンセンやラッセンなど同時代の建築家デザイナーとも協働しました。Model 310もその成果の一つであり、精密な接合技術と素材の誠実な扱いが徹底されています。

デスクの全体構造はソリッド・チーク材で構成され、すべての面が丁寧に仕上げられているため、壁付けではなく空間の中心に自立配置できる設計になっています。この発想は、当時のオープンプランの住居やモダンオフィスの登場と共鳴しており、家具が建築空間の一部として機能するという新しいデザイン観を提示しています。

天板は薄く、脚部はわずかに外側へ広がるSplayed構造を採用し、重厚なチーク材にもかかわらず軽やかな印象を与えます。天板下の引き出しユニットは、外付けの金具を避けたシームレスな造形で、視覚的純度を損なわずに機能性を確保しています。この収納ユニットはオリジナルの鍵が付属し、デスク全体に職人技の精度と品格を添えています。

ヴィット&モルガード=ニールセンは、積層曲げ木技術を椅子設計に応用したことで知られますが、このデスクにおいてはあえて伝統的なソリッド構造を採用しました。それは、耐久性と素材の安定性を重視し、職人技の精緻さを際立たせるための意図的な選択でした。チーク材の堅牢な質感と温かみは、彼らの理念である「誠実な素材使用」を如実に示しています。

ソボー・モブラーとヴィット&モルガード=ニールセンの協働は、デンマーク家具産業の成熟を象徴するものであり、Model 310デスクはその到達点に位置づけられます。空間に秩序と静けさをもたらすこの作品は、今なおデンマーク・モダンの理想を体現する名作として高く評価されています。

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