SM03 Wall Unit | ウォールユニット


About

Designer: Christian Hvidt(クリスチャン・ヴィット)
Manufacturer: Søborg Møbelfabrik(ソボー・モブラー)
Year: 1970
Material: Teak, Mahogany, Oak, Brass


Story

クリスチャン・ヴィットがソボー・モブラーのためにデザインしたSM03ウォールユニットは、デンマーク・モダンデザインの第二世代を代表する作品として高く評価されています。彼の父ペーター・ヴィットとオルラ・モルガード=ニールセンによって確立された機能的で軽快なデザイン言語を受け継ぎながら、SM03はより構造的でシステム的な思考によって再解釈されたプロダクトです。そこには、クラフトと工学が融合する新しいデザイン哲学が明確に表れています。

クリスチャン・ヴィットは機械工学とインダストリアルデザインの両面から訓練を受け、製造工程全体を視野に入れた設計を得意としていました。彼のデザインは、単なる造形的な美しさではなく、構造上の合理性と耐久性を追求する姿勢に貫かれています。SM03のモジュール構造は、その代表的成果であり、家庭やオフィスなど異なる空間で柔軟に構成できるよう設計されています。

製造を担ったソボー・モブラーは、ボーエ・モーエンセンやペーター・ヴィットらとともにデンマーク・モダンを支えた名門工房です。1890年の創業以来、一貫して高品質な木工技術を守り続け、チークやオークなどの良質な素材を用いた家具を製造してきました。特に1950年代以降は、デザイナーとの協働を通じて、精度の高い組立技術や美しい突板加工を磨き上げています。

SM03ウォールユニットは、こうしたソボー・モブラーの高い職人技を前提として設計されました。ユニットの接合部には、フィンガージョイントやほぞ組など、精密な木工技法が用いられた可能性が高く、視覚的な飾りよりも構造的整合性を重視しています。その美しさは表層的な装飾ではなく、整ったプロポーションと正確な仕上げから生まれています。

同時代の他のモジュラーシステムと比較しても、SM03は独自の立ち位置を持っています。ポール・カドヴィウスの「ロイヤルシステム」やカイ・クリスチャンセンの「FMシステム」が壁付け式であるのに対し、SM03は自立式構造を採用し、建築的な存在感を空間に与えます。伝統的な家具としての重厚さを保ちながら、モダンなシステム家具の柔軟性を兼ね備えたこの設計は、デンマーク・モダンの継承と進化を同時に体現しています。

SM03ウォールユニットは、ヴィット家とソボー・モブラーの長年にわたる協働関係の集大成として誕生しました。父から子へと受け継がれた理念、そして工房の技術的記憶が結晶した本作は、合理性と詩的静謐を兼ね備えたデンマークデザインの成熟した到達点を示すものです。

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