About
Designer: Kai Lyngfeldt Larsen(カイ・リングフェルト・ラーセン)
Manufacturer: Søborg Møbelfabrik(ソボー・モブラー)
Year: 1942
Material: Solid Mahogany
Size: W 48 × D 34 × H 49 cm
Story
このソリッド・マホガニースツールは、デンマーク・モダンデザインの黎明期における堅木家具の象徴的存在です。製造を担ったソボー・モブラーは、19世紀末に創業し、指物師としての高い技術と現代的なデザイン感覚を融合させた家具づくりで知られました。素材には高級広葉樹であるマホガニーが用いられ、無垢材から削り出された座面が滑らかな曲面を描く構造は、当時の職人技の粋を示しています。
一方で、同時代のモーエンス・ラッセンによるML42スツールが強く参照される点も見逃せません。1942年にコペンハーゲン指物師ギルド展で発表されたML42は、ソボー・モブラーによる製造であり、三本脚と彫刻的な座面を特徴としています。本作も同様に、マホガニー材の特性を活かし、構造的安定性と造形美を両立しています。
カイ・リングフェルト・ラーセンは、1950年代から60年代にかけてソボー・モブラーと協働し、Model 501や526など多くの作品を残しました。彼のデザインは、機能的で控えめな美しさと精緻な構造を特徴としており、このスツールにもその設計思想が反映されていると考えられます。堅木の彫刻的な座面、角度を持つ脚の配置、そして木製ピンによる伝統的な接合技法が融合し、素材の誠実さを最大限に表現しています。
このスツールは、ソボー・モブラーが持つ高精度な木工技術の証であり、同時にデンマーク・モダンが重視した「正直な素材表現」の理念を体現した作品です。無駄を排した構造の中に、造形的な優雅さと機能性が見事に調和しています。
デンマーク家具の黄金期における堅木加工の頂点を示すこの作品は、単なる座具を超えて、工芸とデザインが融合した文化的成果として再評価されるべき存在です。