About
Designer: Jørgen Henrik Møller(ヨルゲン・ヘンリック・モラー)
Manufacturer: J.L. Møller Møbelfabrik(J.L. モラー)
Year: 1970
Material: Oak, Beech, Wenge, Teak, Cane, Leather, Fabric
Size: W48 × D50 × H80 × SH46 cm
Story
Model 401 Dining Chairは、J.L. Møller Møbelfabrikの第二世代デザイナーであるヨルゲン・ヘンリック・モラーによって設計されました。彼は創業者ニールス・オットー・モラーの息子であり、1960年代後半から1970年代にかけて、デンマーク家具の国際的な再評価が進む中で、新たな時代のデザインを牽引しました。Model 401は、父が確立した構造的厳格さと、次世代の感性による有機的で軽やかな造形を融合させた象徴的な作品です。
背もたれから脚部にかけて流れるような曲線は、単なる意匠ではなく、人間工学的に最適化された形態です。素材には高品質の無垢材が使用され、背もたれは薄板成形ではなく、蒸気曲げや削り出しによる無垢材加工によって実現されています。この技法により、軽快な見た目と耐久性を両立し、使用者の身体に自然に馴染む柔らかい座り心地を生み出しています。
接合部には伝統的なホゾ組み構造が採用され、ネジやダボに頼らず、木材の膨張収縮に対応する柔軟な強度を備えています。この構造は、J.L. Møllerの「一脚責任制度」と呼ばれる職人主導の製造体制と密接に結びついており、熟練職人が一脚ごとに責任をもって仕上げるという哲学を反映しています。
座面には、当時のデンマーク家具としては珍しく籐(ラタン)が採用されました。これにより、軽やかで彫刻的な印象が生まれ、視覚的にも空間に柔らかな印象を与えます。現行品ではペーパーコード、ロープ、ファブリック、レザーなど多様なバリエーションが展開されており、すべて手作業によって張り込みが行われます。
この作品の誕生は、J.L. Møllerが大量生産や合理化に流れることなく、伝統的クラフトマンシップの価値を次世代に引き継ぐという意思の表明でもありました。Model 401は、世代交代によっても変わらない「職人による品質の保証」と、「時代を超越するエレガンス」を象徴する作品として高く評価されています。