BO69 Nyhavn Desk | ニューハウンデスク


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Bovirke(ボーヴィルケ)
Year: 1953
Material: Teak, Steel, Brass, Formica
Size: W140 × D76 × H72 cm


Story

BO69 Nyhavn Desk(ニューハウンデスク)は、フィン・ユールが1953年にデザインし、ボーヴィルケによって製造されたデスクです。この作品は、ユールが自身のスタジオを構えたコペンハーゲンのニューハウン33番地で使っていたオリジナルのデスクをもとに再構成されたもので、デンマーク・モダン家具の工業化が進む1950年代の代表的な成果として位置づけられています。

ユールはそれまで、ニールス・ヴォッダー工房との協業による無垢材中心の「彫刻的家具」を数多く手がけていましたが、BO69ではそれとは異なるアプローチを取り、工業的な製造を前提とした構造と素材を採用しました。細身のスチール脚を採用した軽やかな造形、天板を浮かせるように設計した分離構造は、ユールが追求した「浮遊感(Weightlessness)」の美学を象徴しています。

また、脚部先端に木製の「トゥ(toes)」を組み合わせることで、冷たい金属と温かい木材の質感を対比させ、空間との接地面に優雅さを与えています。この素材の対話は、ユールが繰り返し探求したテーマであり、デンマーク・モダンにおける素材感覚の転換を示す重要な要素です。

引き出しのフロントには真鍮の分割ハンドルが用いられ、実用家具でありながら宝飾的な精度と存在感を備えています。天板にはチークの突き板やフォルミカ(ラミネート)仕上げのバリエーションがあり、耐久性と意匠性を両立させた設計思想が感じられます。

1950年代当時のボーヴィルケは、創業者ポール・H・ルンドのもとで、フィン・ユールのデザインを工業的なスケールで展開する新しい戦略を推進していました。BO69はその象徴的成果であり、手仕事の美学と量産技術の融合を試みた先駆的モデルでした。今日では、House of Finn Juhlによって忠実に復刻され、デンマーク国内外で再評価されています。復刻版では、オーク、ウォルナット、オレゴンパイン、チークなど多彩な素材が選択でき、現代的な用途にも対応しています。

BO69 Nyhavn Deskは、ユールが芸術性と機能性の調和を極限まで洗練させた作品であり、彫刻的造形から合理的構造への転換点を示す記念碑的デザインとして、今なお国際的な評価を受け続けています。

 

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