BO103 Daybed | デイベッド


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Bovirke(ボヴィルケ)
Year: 1955
Material: Teak, Ash, Stained Pine, Brass, Steel, Leather, Fabric
Size: W190–195 × D89 × H41–45 cm


Story

BO103 デイベッドは、フィン・ユールが1955年頃にデザインし、ボヴィルケによって製造された作品です。彼の家具デザインが、職人的な一点制作から、組織化された生産体制へと移行する転換期に位置づけられる重要なモデルです。

このデイベッドの特徴は、構造体と座面を明確に分離した設計にあります。厚いクッションを最小限の接点で支えるフレームは、座面が宙に浮かんでいるかのような軽快さを演出し、家具を「空間を構成する彫刻」として捉えたユールの哲学を体現しています。高さの異なる二つの数値(41cmと45.4cm)は、フレームとクッションを別要素として設計したことを示しており、構造と視覚表現の両面からその意図を裏付けています。

素材構成は多様で、チーク、アッシュ、または着色パインを使用し、真鍮やパティナ仕上げの鋼と組み合わせて製造されました。上位仕様ではチークと革張りが採用され、温かみと高級感を兼ね備えた仕上がりとなっています。一方で、着色パインと布張りの仕様は、輸出市場、とくにアメリカ市場を意識した実用的でコスト効率の高いモデルとして展開されました。

BO103のデザインは、初期の有機的な椅子作品とは対照的に、直線的で建築的な精度を持ち、ユールが建築家としての訓練で培った構造的思考を感じさせます。デイベッドという機能に求められる安定性を確保しながらも、全体の印象は軽やかで、ミニマルな佇まいが空間に静かな緊張感をもたらします。

1950年代のデンマーク家具が国際的に輸出を拡大した時期、BO103はその代表的な製品の一つでした。ソファとしてもベッドとしても使用できる多用途性は、限られた都市住宅の空間に適応するものであり、当時の生活様式を象徴しています。ボヴィルケが製造を担当したことで、ユールの芸術的理念は工業的精度の中で具現化され、デンマーク家具の輸出体制を支える一翼を担いました。

今日では、House of Finn JuhlによりBO103が復刻され、当時の設計思想を現代に継承しています。オリジナルのボヴィルケ製モデルは、素材の誠実さと職人の手仕事が生み出す細部の完成度により、単なる家具を超えた歴史的遺産として評価されています。

 

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