Noritsugu Oda | 織田憲嗣


Story

織田憲嗣(おだ・のりつぐ、1946年高知県生まれ)は、日本におけるデンマーク家具研究の第一人者であり、半世紀にわたって世界中の名作椅子を収集・研究してきた「椅子研究家」です。彼の活動は、単なるコレクションを超え、研究・教育・文化振興を包括する体系的な学術実践として位置づけられています。

大阪芸術大学を卒業後、高島屋宣伝部に勤務し、商業デザインの現場で感性を磨きました。その後、イラストレーターとして独立し、デザイン事務所「画文舎」を設立。仕事の合間を縫って椅子を収集し、やがてそれが学術的探求へと発展しました。ル・コルビュジエの「LC4」から始まった最初の一脚が、生涯の研究テーマを決定づけたとされています。

1994年、北海道東海大学芸術工学部教授に就任。全コレクションを携えて北海道に拠点を移し、研究と教育を融合した独自の環境を構築しました。特に旭川家具産地との連携を通じて、木工文化とデザイン教育の架け橋を担った点は特筆されます。

彼の代表的業績である「織田コレクション」は、約1,350種類の椅子、8,000点を超える家具・日用品、さらに2万点に及ぶ図面や文献資料で構成され、世界でも類例のないデザインアーカイブです。2016年以降、コレクションは北海道東川町により公有化され、文化財として登録されました。

織田氏は1997年にデンマーク家具賞、2015年に第1回ハンス・J・ウェグナー賞を受賞。フィン・ユール協会名誉理事にも選ばれ、デンマーク本国から正式に認められた数少ない研究者の一人です。その研究哲学は「美しくていねいに暮らす」という北欧デザインの社会思想を、日本の生活文化に根付かせる試みとして、今も多くの人々に影響を与えています。


About

Year: 1946–
Place: Hokkaido(北海道)
Affiliation: Tokai University(東海大学)
Specialization: Danish Modern Design, Chair Studies, Design Archives
Major Awards: Danish Furniture Award(1997) / Hans J. Wegner Award(2015) / Honorary Member of the Finn Juhl Society(2012)


History

1946: 高知県に生まれる。幼少期より手仕事や木工への関心を示す。
1960年代後半: 大阪芸術大学でデザインを専攻し、造形・建築・インテリアの基礎を学ぶ。
1970年代初頭: 高島屋宣伝部に勤務。広告・商業デザインを通じて生活文化に触れる。
1975頃: ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンによるLC4を入手し、椅子収集を開始。
1979: イラストレーターとして独立。コピーライター里見喜久夫とともにデザイン事務所「画文舎」を設立。
1980年代: 椅子研究室「CHAIRS」を設立し、体系的な椅子研究を開始。
1984: デンマークのハンス・J・ウェグナーを初訪問。以後20年間の交流が続く。
1986: ウェグナー本人から「フープチェア」を贈られる。
1989: 『日本の家』(福音館書店)を出版。日本の住文化と家具の関係性を分析。
1990年代初頭: 日本各地で講演・展覧会を開催。北欧デザインの理念を紹介。
1994: 北海道東海大学芸術工学部教授に就任。全コレクションを携え北海道へ移住。
1997: デンマーク家具賞(Danish Furniture Award)を受賞。非デンマーク人として初の受賞。
2000: 北海道東海大学で椅子文化の教育プログラムを構築。
2002: 『ハンス・ウェグナーの椅子100』、『デンマークの椅子』を刊行。日本におけるデンマーク家具研究の基礎文献となる。
2006: 『200脚の椅子』(グリーンアロー出版社)を刊行し、20世紀椅子史の体系化を試みる。
2007: 『イラストレーテッド名作椅子大全』(新潮社)を出版。ビジュアル資料の集大成として高い評価を受ける。
2012: フィン・ユール協会より名誉理事を授与される。日本人初の快挙。
2014: 東海大学名誉教授に就任。
2015: 第1回ハンス・J・ウェグナー賞を受賞。ウェグナー研究への功績を正式に評価される。
2016: 織田コレクションが北海道東川町により公有化。文化財登録が進められる。
2018: 東川町「せんとぴゅあ」でコレクション展を開催。地域文化資産として広く公開される。
2020: コレクション展示「樹種とデザイン」開催。家具における木材選定の文化的意義を提示。
2021: 隈研吾氏とともに「良い椅子の日」(4月14日)を制定。講演会や展示を通じて椅子文化を啓蒙。
2022以降: 公有化された織田コレクションを基に、教育・地域産業・観光の連携モデルを構築。
2024: 公有化された椅子1,300脚以上、関連資料2万点が東川町デザインアーカイブとして公開。
現在: 北海道を拠点に講演・監修・展覧会活動を続け、デザイン文化の継承と普及に取り組む。


Book

1989 『日本の家』 福音館書店
2002 『ハンス・ウェグナーの椅子100』 平凡社
2002 『デンマークの椅子』 グリーンアロー出版社
2006 『200脚の椅子』 グリーンアロー出版社
2007 『イラストレーテッド 名作椅子大全』 新潮社
2008 『座る・くらべる・デンマークの椅子』 学習研究社
2010 『世界の名作椅子図鑑』 誠文堂新光社
2012 『フィン・ユールの世界』 平凡社
2014 『北欧モダンデザインの巨匠たち』 学芸出版社
2018 『Oda Collection 椅子とデザインの記録』 東川町文化出版
2020 『美しくていねいに暮らすための椅子』 旭川市デザイン振興財団
2024 『20th Century Design by ODA COLLECTION – through Chair』
2025 『織田憲嗣の世界の名品・定番品 その愛される理由』

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